大井川鉄道の被災区間「現場を歩くツアー」運休から1年半、現状と課題を伝える場に



大井川鉄道は4月17日、「静岡県 大井川鐵道被災区間見学ツアー」を5月に開催すると発表した。同社が運営する大井川本線のうち水害で被災した区間を巡る。

もと南海電鉄の21000系電車。水害のため千頭駅に取り残された状態になっている。【画像:大井川鉄道】

新金谷駅を9時50分に出発。大井川本線のSL列車「SL南アルプス号」に乗って家山駅に向かい、貸切バスに乗り継ぐ。運休中の区間でとくに被害が大きい下泉駅から田野口駅の3.6kmは、大井川鉄道社員の解説付きで被災した線路を歩く。

運休により千頭駅に取り残された、もと南海電車の運転席着座体験も実施。同駅で稼働していない転車台を回す体験も盛り込んだ。被災区間を歩く際に着用するヘルメットはツアー名が入ったオリジナル仕様。記念品として持ち帰ることができる。

運休区間にある田野口駅。【画像:大井川鉄道】
千頭駅の転車台を回る体験もツアーに盛り込まれている。【画像:大井川鉄道】

開催日は5月11・18日の計2日で、両日とも日帰り。1回につき45人を募集する。参加できるのは中学生以上で、18歳未満は成人の同伴が必要だ。旅行代金は2万8000円。申し込みは大井川鉄道のウェブサイトで受け付ける。

大井川本線は大井川に沿って金谷~千頭の39.5kmを結ぶ路線。このうち川根温泉笹間渡~千頭の19.5kmは2022年9月、台風15号の影響で土砂流入などの大きな被害が発生し、1年半が過ぎたいまも運休が続く。

土砂が流入し線路が埋まった大井川本線。【画像:大井川鉄道】

大井川鉄道は2023年1月、自力復旧が困難と表明。静岡県や沿線の川根本町などで構成される「大井川鐵道本線沿線における公共交通のあり方検討会」が同年3月に設置され、これまで議論が行われてきた。

今年2024年3月の会合では早期の復旧を目指す方向で一致したが、約22億円とされる運行再開費用を誰がどう負担するかは決まっておらず、再開時期のめども立っていない。検討会はクラウドファンディングや企業版ふるさと納税などの活用も視野に入れ、費用確保の調整を図る考えだ。

大井川鉄道は運休区間を巡るツアーについて「不通区間が現在どのような状況にあるか、全線運転再開にあたり何が課題か、全線運転再開後の継続的な維持を行ってゆくにあたり、どのようなことが必要かということや私たちの全線運転再開に対する思いを、参加者のみなさまをはじめとした多くの方々にお伝えする機会」として企画したとしている。

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