新日本海フェリーと三菱造船は4月29日、三菱重工業下関造船所で建造中のフェリーの命名進水式を執り行った。船名は「けやき」。新日本海フェリーの京都府舞鶴市と北海道小樽市を結ぶ航路で運用される。

「けやき」は鉄道・運輸機構の船舶共有建造制度を活用したもの。船名は舞鶴市の市木であるケヤキにちなんでいる。新日本海フェリーは「(ケヤキが)強健で大地にしっかりと根を張り、力強く空に向かって成長していく様子は、関西と北海道を観光と物流で繋ぐ新造船の名にふさわしい」としている。
全長199mで総トン数は約1万4300トン。8540kWの主機4基を搭載する。航海速力は28.3ノット。トラック約150台と乗用車約30台を積載できる。旅客定員は286人。
国内フェリーでは初採用となるダックテールを含む省エネ船型で、アンチローリングタンクとフィンスタビライザーの併用による省エネ型減揺システムなどを採用。新日本海フェリーによると、従来船に比べ約5%の省エネルギーを実現できるという。
船内は3層吹き抜けのエントランスとシースルーエレベーターを採用。船首部は2層吹き抜けのフォワードサロンを備える。レストランやコース料理を提供するグリルでは海を眺めながら食事することができ、最上階には露天風呂に加え、さまざまなビジュアルコンテンツを鑑賞できる多目的ルームを設けている。
船室はオーシャンビューの浴室を設けた「スイートルーム」や、専用テラス付きの「デラックス」、シャワー・トイレが完備された「ステート洋室」、家族旅行向けの「ステート和洋室」、ペットと同伴できる「ウィズペットルーム」を用意。通常タイプの船室「ツーリスト」もプライベート空間を確保した寝台を提供する。
舞鶴~小樽航路では現在、「はまなす」「あかしあ」が運用されている。この2船は国内の長距離フェリーとしては最大級で全長224.8m、総トン数1万6897トン。旅客定員は746人で、車両はトラック158台と乗用車65台を積載できる。これに比べると「けやき」は小型で速度も遅い。近年のフェリーの輸送事情にあわせてコンパクト化・省エネ化を図ったといえる。
「けやき」は今後、艤装(ぎそう)工事や試運転などを経て12月から新日本海フェリーの舞鶴~小樽航路で運用される予定だ。
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