東海汽船「紙テープ見送りやめて」起源は米国の日本人移民、かつては鉄道でも



東京と伊豆諸島などを結ぶ航路を運航している東海汽船は1月29日、客船出航時の紙テープを使用した見送りの「取り止め」を発表した。

東海汽船の船舶。【画像:ヨッシー宙船/写真AC】

東海汽船によると、各島出航時に岸壁と船を結ぶ紙テープが投げられることがあり、「客船ならではの見送りの風景」として長いあいだ親しまれている。一方で大量の紙テープが海に流れるため、海洋汚染の防止や安全運航などの観点から「速やかに改善を要する状況」という。

このため東海汽船は、3月1日から紙テープによる見送りの取りやめを実施することにした。同社は実施日前でも紙テープの使用を極力控えるよう呼びかけている。

紙テープを使った船の見送りは米国のサンフランシスコで始まったといわれている。杉浦昭典『海の慣習と伝説』(舵社、1983年)によると、1915年に開催されたサンフランシスコ万博で、日本企業が商品を縛るための紙テープを「自然縒り出し桜紐」の名称で出品。しかし諸外国では商品を結ぶのに色リボンを使用する習慣があったことから、ほとんど売れなかった。

そこで、サンフランシスコでデパートを経営していた日本人移民が「自然縒り出し桜紐」を安く買い取り、「送る人と、送られる人の、最後まで別れを惜しむ握手」の代わりにと宣伝して販売。これが大いに当たったといい、世界各地の港で紙テープによる見送りがみられるようになった。

色とりどりの紙テープが舞う船舶出航時(1990年の下関港)。【撮影:草町義和】

紙テープによる見送りは、のちに鉄道でもみられるようになる。小田急電鉄の元乗務員の雑誌記事(川島常雄「新宿-御殿場間直通列車 キハ5000形に乗務した頃」『鉄道ピクトリアル』1999年12月増刊号)によると、1955年に運行を開始した小田急小田原線~国鉄(現在のJR)御殿場線の直通列車の場合、自衛隊など役所関係者の東京への異動に直通列車が使われ、「ホームでは豪華船の出帆よろしく五色のテープと万歳で大変な見送り」があった。

しかし、列車の発車後に残された大量の紙テープの後始末が大変だったことに加え、車両の床下機器に絡みついて空調装置に影響を与えるおそれもあり、紙テープの使用が事実上禁止されたという。

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