新造ジェットフォイル「結」試乗 東海汽船と鉄道・運輸機構の共有船、伊豆諸島結ぶ



東海汽船の新型超高速旅客船(ジェットフォイル)「セブンアイランド結(ゆい)」が、このほど完成。7月13日から東京都心と伊豆諸島を結ぶ航路で営業運航を始める。これに先立つ7月11日、「結」に試乗した。

東海汽船の新造ジェットフォイル「セブンアイランド結」。【撮影:草町義和】

出発地点である東京港の竹芝桟橋(東京都港区、竹芝客船ターミナル)に向かうと、目の前に濃い青色をした「結」が停泊していた。側面の窓が上下2段に並んでいるから「2階建て」だが、思っていた以上に背が低く、そして小さい。

船体は美術家の野老朝雄さんがデザイン。「本土と島を結ぶ」という「結」のコンセプトにあわせ、伊豆諸島沖を流れる黒潮のような藍色「TOKYOアイランドブルー」をまとったカラーリングにしたという。

船体は思っていた以上に小さかった。【撮影:草町義和】
船内の座席。【撮影:草町義和】
飲み物の自動販売機もある。【撮影:草町義和】

「結」に乗り込むと、鉄道の特急列車や飛行機でよく見かける、背の高いシートが並んでいる。飲み物の自動販売機もあった。席に着くと、シートベルトの着用を求める案内が入る。飛行機に搭乗したような気分になるが、船体はゆったりと横揺れしており、やはり船だなと思う。

■ジェットフォイル初の「バリアフリー船」

「結」は10時00分頃、大きなエンジン音を響かせて出航。横揺れは続いたが、出航前はゆったりと上昇・下降する揺れだったのに対し、出航後はほどなくして小刻みに水平方向にスライドするような揺れに変わった。標準的な船に比べれば不快感はなく、船酔いになりそうな感覚も覚えなかった。

窓外の景色は高速で流れていく。【撮影:草町義和】

飛行機が離陸するときも、離陸直前はタイヤが滑走路を走るときに発するゴツゴツとした揺れを感じ、離陸するとその揺れを感じなくなるが、それと似ているかもしれない。

ということは、船体が水中翼を使って「離陸」ならぬ離水したはずだが、船体中央部の座席に座って窓から離れた位置で外を眺めてみると、海面の高さが変化したようには見えなかった。窓側に座っていれば高さの変化を実感できたのだろうか。

窓には芝浦ふ頭や品川ふ頭、お台場の船の科学館など、見知った風景が続々と現れては後方に流れていく。とても船から見える景色の流れ方とは思えない。「結」の航海速力は43ノット(約80km/h)。大型のカーフェリーだと20~30ノット(37~56km/h)くらいだろうから、かなり速い。

大井ふ頭沖から南下し、ほんの数分で東京国際空港(羽田空港)沖に。窓の外には着陸する飛行機の姿も見えた。「結」はここで180度反転して北上し、11時30分頃に竹芝桟橋に着岸した。

羽田空港沖では着陸する飛行機の姿が見えた。【撮影:草町義和】
階段の脇には昇降式チェアが設置されていた。【撮影:草町義和】
2階の多目的トイレ。【撮影:草町義和】

下船時に船内を少し回ってみると、1階と2階をつなぐ階段には昇降式チェアが設けられている。ほかにも、2階の出入口付近には多目的トイレが設置されていた。「結」はジェットフォイルとしては初のバリアフリー船という。

■米ボーイングが開発した水中翼船

「結」は川崎重工業の神戸工場で製造され、6月に完成。寸法は全長27.36m、幅8.53m、深さ2.59mで、総トン数は176トンになる。旅客定員は241人。2基のガスタービンエンジンで動く高圧水流の噴出機(ウォータージェット推進機)から毎秒3トンの海水を噴出して前に進む。波高3.5mの荒波でも安定した航行が可能という。

船首部の脇(左上)には製造メーカーの川崎重工のロゴマークが見える。【撮影:草町義和】

ジェットフォイルは水中翼船の一種。船体の前後にある水中翼に働く揚力で、船体を水面上に持ち上げて航行する。米国ボーイング社が開発したジェットフォイルは、ガスタービン駆動のウォータージェット推進機で航行。標準的な船舶より高速で航行できるほか、波が高くても安定した運航が可能などの利点がある。

日本では1977年、ボーイング製のジェットフォイル「おけさ」が佐渡汽船の航路で運航を開始。ジェットフォイルのライセンスを受けた川崎重工も1989年から建造を始めたが、1995年までに15隻を建造したところで生産を中止した。国内でジェットフォイルが建造されたのは25年ぶりだ。

■共有船制度の活用で負担軽減

国内では現在、7航路で21隻のジェットフォイルが就航。東海汽船では2002年以降、中古ジェットフォイルを導入しており、現在は4隻のジェットフォイルを保有している。

ジェットフォイルは水中翼を使って船体を海面から浮かせ、ウォータージェットで高速航行する。【撮影:草町義和】

時刻表によると、東京(竹芝)~大島間の最短所要時間は、標準タイプの大型客船が4時間30分なのに対し、高速航行が可能なジェットフォイルは1時間45分。利用者にとっては大幅な時間短縮による利便性の向上、事業者側には誘客促進や運用効率化などの利点がある。

しかし、東海汽船のジェットフォイルは老朽化のため更新が必要になった一方、新造ジェットフォイルの導入には巨額の費用がかかるという課題があった。このため、東海汽船は国の独立行政法人である鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)の「船舶共有建造制度」を活用して新造ジェットフォイルを導入することにした。

鉄道・運輸機構などによると、この制度では、運送事業者と鉄道・運輸機構が費用を分担して造船業者に共同で発注。完成した船舶は費用の負担割合に応じ、事業者と鉄道・運輸機構が一定の期間(原則として船舶の耐用年数、7年から最長15年)共有する。共有期間の満了後は事業者の100%保有船になる。

事業者にとっては船舶の導入コストを軽減でき、鉄道・運輸機構からの技術支援を受けることができるなどの利点がある。「結」の場合、建造費の総額は51億円。このうち45%は東京都からの補助金だが、残り55%は東海汽船と鉄道・運輸機構が船舶共有建造制度により建造費を分担した。

ちなみに、「鉄道」を冠した法人が船舶を所有するのは不思議な気もするが、これは船舶共有建造制度を担っていた船舶整備公団が1997年に鉄道整備基金と統合して運輸施設整備事業団に変わり、さらに2003年、日本鉄道建設公団(鉄道公団)との統合により現在の鉄道・運輸機構に生まれ変わったためだ。

「結」の導入を機に引退する「セブンアイランド虹」。【画像:東海汽船】

「結」の就航第一便は7月13日、竹芝を8時50分に出航し、大島・利島・新島・式根島の各島を経由して神津島に向かう予定だ。一方、東海汽船のジェットフォイル4隻のうち「セブンアイランド虹」が7月12日限りで定期航路での営業運航を終了。7月16日には「結」の竹芝出航(8時50分)にあわせて「虹」も出航し、引退する「虹」が新造「結」を見送る形になる。