常磐線の新松戸駅「快速停車」ホーム増設で3分短縮 松戸市が調査結果を公表



常磐線快速列車の新松戸駅への停車を目指している千葉県松戸市は、快速列車を停車させるための同駅の改良案や費用対効果(B/C)の試算などの調査結果を3月に取りまとめた。所要時間の短縮や乗換回数の減少など整備効果は高いとしつつ、費用負担などについてさらなる検討が必要としている。

新松戸駅を通過する常磐線の快速列車。【撮影:草町義和】

この調査結果は、2022年度から2023年度にかけて実施した調査の成果などに基づき「現時点での状況を整理したもの」(松戸市)。それによると、常磐線の各駅停車(緩行線)が停車する既設ホームの両端を延伸。さらに既設ホームの両外側に緩行線の上りホームと快速線の下りホームを新設する。既設ホームには各停下り列車と快速上り列車が停車する。また、武蔵野線の高架下に新たな改札を設置する。

新松戸駅の現在の状況(左)と改良案(右)。【画像:松戸市】

新松戸駅から日暮里駅や上野駅、東京駅までの所要時間は、快速の利用により3分以上の短縮を見込む。その一方、新松戸駅を通過する常磐線の利用者にとっては所要時間の増加が考えられ、東京駅から新松戸以北の柏駅や我孫子駅などまでの所要時間は1分以上増える可能性がある。

新松戸駅からの所要時間の変化。東京都心部のおもな駅は3分以上の短縮を見込む。【画像:松戸市】
東京駅からの所要時間の変化。新松戸以北では所要時間が増加する可能性がある。【画像:松戸市】

新松戸駅に快速が停車するようになった場合、新松戸駅で乗り降りする利用者に加え、武蔵野線や流鉄線から常磐線に乗り換える利用者も増加。同駅の利用者数は快速が停車しない場合に比べ、4割ほど増えることを見込む。

概算工事費は物価変動を考慮せず用地の取得・造成費を含まない場合で約232億円。施工期間は10年と想定した。B/Cは30年間で1.53、50年間で1.9と試算。工事費の高騰を見込んだ概算工事費に社会的割引率を適用した場合でも30年間で1.45、50年間で1.8とし、社会的経済効果が事業費を上回る「1」を超えた。

一方で財源確保は「鉄道事業である駅等改良工事について、松戸市が補助金を確保し、起債することは現状で見込めない」とし、費用負担などについてさらなる検討が必要という。

新松戸駅は1973年、武蔵野線(旅客営業)の府中本町~新松戸の開業にあわせて新設された。武蔵野線のホームに加え、常磐線の緩行線にも島式ホーム1面2線を設置。快速線にはホームを設置しなかった。

新松戸駅の常磐線ホームは緩行線のみ島式1面2線で設けられている。【撮影:草町義和】

快速の停車を要望する声は古くからあったものの、事業費や駅周辺の区画整理などの課題があり、具体的な検討は行われていなかった。しかし2015年5月から、松戸市とJR東日本の東京支社が定期的な勉強会を開催。松戸市は2018年度予算で調査費を計上するなど、具体化に向けた動きが高まっている。

松戸市は「財源の確保や費用負担、物価高騰等を勘案しながら、事業の実現性等について、今後も関係機関と協議を行い、検討を進めていきます」としている。

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