上野東京ライン「川口駅に停車」ホーム増設、新駅舎・自由通路も整備 基本協定締結



埼玉県川口市とJR東日本大宮支社の2者は4月24日、「川口駅上野東京ラインホーム及び自由通路等整備に関する基本協定」を締結したと発表した。川口駅に上野東京ラインの列車が停車するホームなどを整備する。

川口駅の京浜東北線ホームの脇を通り過ぎていく上野東京ラインの列車。【撮影:草町義和】

川口駅は線路名称上、東北本線の駅。駅の東側から京浜東北線の線路と上野東京ライン(宇都宮線・高崎線)の線路、もともとは貨物線で現在は湘南新宿ラインなどの旅客列車も走る線路が並ぶ。ホームは京浜東北線の島式1面のみ設置されており、上野東京ラインや湘南新宿ラインの列車は通過している。

基本協定で規定された事業は「ホーム等整備事業」「自由通路整備事業」「店舗整備事業」の三つ。川口駅の鉄道用地を西側に拡幅し、上野東京ラインのホームを増設する。湘南新宿ラインのホームは設けない。また、既存の橋上駅舎に代わる新しい橋上駅舎と自由通路を整備。新駅舎の東側には店舗を整備する。いずれも設計・工事は基本的にはJR東日本が行う。

川口駅再整備のイメージ。【画像:川口市】
新たに整備する上野東京ラインのホームや自由通路などの位置。鉄道用地の西側を拡幅してホームの増設スペースを確保する。【画像:川口市】

費用負担は原則として、ホームや自由通路の整備費を川口市が負担。店舗の整備費はJR東日本が負担する。川口市は自由通路のみ保有し、ホームやコンコースなどの鉄道施設はJR東日本が保有する。維持管理や大規模改修はそれぞれの所有者が実施する。

2者は今後、本年度2025年度から測量・地質調査と基本・概略設計を順次実施する予定としている。

基本協定の締結式。【画像:川口市】

川口駅の利用者数(乗車人員)はJR東日本が発足した1987年度で約5万9000人だったが、駅周辺のマンション開発などで通勤利用が増え、コロナ禍が本格化する前の2019年度は約8万4000人に膨れあがっている。一方で京浜東北線しか停車しないことからラッシュ時の混雑が激しく、川口市では古くから中距離電車(現在の宇都宮線や高崎線、上野東京ライン、湘南新宿ライン)の川口駅への停車を求める声が上がっていた。

高層マンションが林立する川口駅の周辺。【撮影:草町義和】

1990年に当時の川口市長が市議会で答弁したところによると、市長はJR東日本を訪ねて中距離電車の停車を直接申し入れたが、JR東日本は「中距離電車の目的が遠距離からの速達性であり、できる限り停車をさせたくないという基本的な考え方を持っている」として難色を示したという。2008年ごろからは湘南新宿ラインの停車を求める運動が活発になったが、このときもJR東日本は中距離電車の速達性低下を懸念して実現していない。

2016年、国の交通政策審議会は『東京圏における今後の都市鉄道のあり方について』を答申。そのなかで埼玉県から川口駅のホーム新設の提案があったことを盛り込んだ。これ以降、川口市は調査費を予算計上するなどして調査や検討を本格化。JR東日本も従来の立場からの軌道修正を図り、調査や川口市との協議を行っていた。

川口市は当初、上野東京ラインのほか湘南新宿ラインも停車の検討対象としていた。しかし、湘南新宿ラインは運行本数がラッシュ1時間あたりで12本と少なく混雑率も170%程度と高いこと(上野東京ラインは29本、140%程度)、貨物列車や埼京線と線路を共用していて緊急時の代替性に難があることから、のちに検討対象を上野東京ラインに絞った。

今回の基本協定では、事業費の額や工期、新設ホームの使用開始時期などは盛り込んでいない。川口市のこれまでの調査では、ホーム増設と駅舎の改修をあわせた概算事業費は約400億円前後。測量・設計に数年程度かかり、さらに新設ホームの使用開始までの工期を10~12年程度としている。順調に進めば新設ホームの使用開始は2040年代前半になるとみられる。

ホームの増設に伴い鉄道用地の拡幅が必要だが、拡幅用地は駅西側の市有地に収まり、用地買収の難航で工事が遅れることはないとみられる。その一方、今後の調査で地質の状態などが判明すれば工期に影響する可能性がある。事業費も近年の物価高騰を背景に膨張する可能性がありそうだ。

川口駅の西側は緑地などの市有地が広がっている。【撮影:草町義和】

川口市は基本協定の締結を受け「上野東京ラインの停車により、川口駅から東京駅、品川駅や大宮駅までの所要時間が短くなります」とアピール。さらに「将来的には羽田空港アクセス線の開業による羽田空港へのダイレクトアクセスの実現など、川口市民のさらなる利便性が向上することを本市として期待しています」とコメントした。一方、JR東日本は「川口市や地域の皆さまと連携しながら事業を進め、沿線地域の発展に貢献していきます」とコメント。羽田空港アクセス線には触れていない。

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