川口駅「中電停車」ホーム増設の調査費計上、JRに委託 川口市2023年度当初予算案



埼玉県川口市は2月7日、来年度2023年度の当初予算案を発表した。前年度2022年度に比べ143億1540万円増の4398億8100万円。このうち一般会計は137億6000万円増の2335億8000万円になる。鉄道関係ではJR川口駅のホーム増設構想について調査費を計上した。

京浜東北線の川口駅(右)。宇都宮・高崎線や湘南新宿ラインが走る線路にはホームがない。【撮影:草町義和】

川口市が策定した「川口駅周辺まちづくりビジョン」に基づき、「川口駅周辺まちづくり関連事業」として5億5874万4000円を計上。このうち7157万7000万円が新規計上の「中距離電車ホーム増設等調査事業」になる。

川口駅のホーム増設などの計画案作成や事業費積算などを6160万円でJR東日本に委託。997万7000円で事業費の妥当性や合理性を検証する。このほか、「川口駅周辺まちづくり検討事業」(1107万7000円)を引き続き計上。宇都宮・高崎線(上野東京ライン)や湘南新宿ラインを走る「中距離電車」(中電)が川口駅に停車した場合の効果を分析する。

川口駅は法手続上、東北本線の駅。京浜東北線の線路(電車線)のほか、宇都宮・高崎線(上野東京ライン)の列車が走る線路(列車線)、貨物列車や湘南新宿ラインの列車が走る線路(貨物線)がそれぞれ複線で敷かれている。ホームが設置されているのは京浜東北線だけで同線の列車しか停車しない。

利用者数(乗車人員)はJR東日本が発足した1987年度で約5万9000人だったが、駅周辺のマンション開発などでコロナ禍前の2019年度は約8万4000人に膨張。ラッシュ時の混雑が悪化している。

このため列車線や貨物線にホームを設置して中電を停車させ、乗り降りできる列車を増やすことが考えられている。構想自体は古くからあり、川口市は駅周辺の都市計画決定(1985年)の際、駅の西側を中心に線路用地に転用できる敷地を確保し、ホームを増設できるようにした。この敷地は現在、緑地や公園として使われている。

川口駅に隣接する緑地や公園は将来の線路用地と位置付けられている。【撮影:草町義和】

しかし中電は各駅停車の京浜東北線に対し、一部の駅のみ停車する快速列車の位置付け。川口駅に停車すると同駅と赤羽駅に連続して停車することになり、JR東日本は困難との認識を示していた。

JR東日本は2018年にホーム増設に前向きな考えを示したものの、翌2019年に工事費が約400億円にのぼると試算し、その全額を負担するよう川口市に求めた。市の負担分を200億円前後と考えていた川口市はこれに反発して議論は暗礁に。中電の利用者からも、所要時間が延びることや混雑が激しくなることを懸念して川口停車に反対の声が上がった。

2021年7月に川口市はJR東日本を加えた「まちづくりビジョン」の検討会を設置し、議論を再開。2022年4月にはホーム増設計画を盛り込んだ「まちづくりビジョン」を策定した。2023年度の調査では複数案が検討されるとみられ、従来試算の400億円に比べ工事費をどれだけ抑えられるかが焦点になりそうだ。

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