しなの鉄道は3月28日、国土交通省の北陸信越運輸局長に旅客運賃の上限変更認可を申請した。ICカードの導入にあわせて1円単位運賃を設定することから、上限額の変更が必要になったもの。当面は実際に適用する運賃(実施運賃)を現行水準並みに抑えるが、上限額は全体で14.7%値上げする。

普通旅客運賃の上限は平均25.1%の値上げ。初乗り(1~3km)が現行190円のところ50円値上げの240円になる。12~103kmの区間では営業キロ数に賃率(現行20.05円)と消費税率を乗じて算出しているが、賃率を25.07円に引き上げる。通勤定期旅客運賃の上限は普通旅客運賃の改定を反映し、値上げ率は平均13.9%。通学定期は家計負担を考慮して平均5%値上げする。
認可された場合、しなの鉄道は実施運賃を届け出て来年2026年春に運賃を改定する方針。実施運賃は普通旅客運賃で消費税端数処理を切り上げに見直し、定期旅客運賃は現行額を据え置く。これに伴い全国交通系ICカード「Suica」を導入し、1円単位運賃も設定。普通旅客運賃は全国交通系ICカードを利用する場合に1円単位運賃を適用し、紙の切符は従来通り10円単位運賃を適用する。

しなの鉄道によると、2023年度の利用者数はコロナ禍前(2018年度)に比べ約8割にとどまっている。また、2023年6月には枕木の老朽化による軌間拡大が原因とみられる脱線事故が発生。「(設備投資や修繕が)施設の老朽化のスピードに追い付いていない問題点」が浮き彫りになったとし、当初計画より修繕費を約20億円増額した緊急対策を2025~2029年度に実施する。こうしたことから将来を見据え、旅客運賃の上限変更を申請したという。
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