国土交通省は2月7日、国鉄長期債務の2023年度末時点の処理状況などを発表した。国鉄分割民営化で発足したJR各社のほうが公共企業体としての日本国有鉄道(国鉄)より存続日数が長くなってから処理状況が発表されたのは、今回が初めて。依然として巨額の長期債務が残っている。

国交省によると、2023年度末時点の国鉄長期債務残高(国の一般会計承継分)は15兆715億円で、前年度2022年度末(15兆2561億円)から1846億円の減少。新たな処理スキームに移行した1998年度の約24兆円から約9兆円(約37%)減少した。
日本の国鉄線は長らく政府が運営していたが、終戦直後の1949年6月1日、当時の運営官庁だった運輸省から公共企業体としての国鉄に分離された。1957年以降は黒字経営だったが、1964年から赤字に転落している。
その後も高度経済成長に伴う輸送量増大に対応するための幹線や大都市路線への設備投資や、採算が取れないローカル線の建設・運営、自動車や航空など交通機関の多様化による輸送量の減少などで借金が膨らみ、経営が破綻。1987年4月1日に分割民営化され、旅客6社と貨物1社のJRが発足した。公共企業体としての国鉄の存続日数は1万3818日だったが、JR各社の存続日数は今年2025年1月29日で1万3819日になり、国鉄より長くなった。

国鉄長期債務は1987年の国鉄分割民営化時点で約37兆1000億円。このうち約25兆5000億円が国鉄清算事業団に承継された。国鉄清算事業団は約11兆8000億円を土地やJR株式の売却などで長期債務を処理し、残る約13兆8000億円は国民負担とすることが考えられていた。
しかし、折からのバブル景気を背景に土地の売却が事実上凍結されたこともあって長期債務の処理が進まず、1998年には逆に約28兆円まで膨張。このため新たな処理スキームに移行し、約24兆円を国の一般会計(国民負担)で処理し、約4兆円を日本鉄道建設公団(現在の鉄道・運輸機構)が処理することになった。国民負担は当初想定の1.8倍に膨れあがった。
仮に1998~2023年度の処理ペースが今後も続くとした場合、国鉄長期債務の処理は単純計算で分割民営化から78年後の2065年ごろまで続くことになる。
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