会津鉄道「新しい観光列車」JR只見線でも運行 再構築計画が認定



国土交通省の東北運輸局長は1月30日、福島県や会津鉄道などが地域交通法に基づき申請していた会津線の鉄道事業再構築事業の実施計画を認定した。会津線を運営する会津鉄道に対し、国や福島県、沿線自治体が鉄道施設の維持・修繕や新しい観光列車の導入などを支援する。

会津鉄道の「お座トロ展望列車」。【画像:mofutetsu/写真AC】

実施計画の計画期間は2025年4月1日~2035年3月31日の10年間で、事業費は合計141億円8000万円。一部は社会資本整備総合交付金を活用する予定だ。おもな利便確保策として「観光列車等導入による利便性向上」「安全・安心な運送サービスの提供」「地域と連携した利用促進・増収施策の推進による持続可能性の向上」を盛り込んだ。

「観光列車等導入による利便性向上」は42億円。国土交通省は「省エネ性能や経営効率化に寄与する先進的な車両であって、観光コンテンツとしてのインバウンドの魅力向上に資する観光車両等を導入することにより、新たな旅客需要と経済効果を創出するほか、コスト削減にも貢献が期待される」としている。

会津鉄道によると、新しい観光列車は現在運行している観光列車「お座トロ展望列車」の後継車両の位置づけで、新型・新造車両を導入する方向で検討中。車両の所属先としては会津鉄道になるが、JR東日本が運営する只見線でも運行する。導入時期は早くて4~5年先を見込んでいるという。

「安全・安心な運送サービスの提供」は99億8000万円。枕木のプレストレストコンクリート(PC)化などによる安全性・乗り心地の改善、ホーム上屋の新設など駅施設の改良、トンネル内照明のLED化など鉄道施設の更新・修繕を実施する。

会津線は西若松~会津高原尾瀬口の57.4kmを結ぶ鉄道路線。列車は西若松駅で接続しているJR只見線に乗り入れて会津若松~会津高原尾瀬口を結んでいるほか、会津高原尾瀬口駅で接続している野岩鉄道野岩線(栃木県・福島県)とも直通運行している。

会津鉄道の湯野上温泉駅。【画像:Hrc_hiro/写真AC】

1927年から1953年にかけ国鉄線として開業。山間部のローカル線で利用者が少なく、輸送密度は1977~1979年度の平均で1333人だった。1984年に国鉄再建法に基づき廃止対象の第2次特定地方交通線に指定されたが、1987年にはJR東日本への暫定継承を経て第三セクターの会津鉄道が経営を引き継ぎ、鉄道として存続が図られた。

自動車交通の発達や沿線の過疎化を背景に利用者は減り続けており、2023年度は輸送密度が557人、年間利用者数が42万6000人だった。2034年度の年間利用者数は再構築事業を実施しない場合で41万5000人だが、実施する場合は5万5000人多い47万人を見込む。営業損益も再構築事業を実施しない場合は2034年度で3億4500万円の赤字、実施する場合は2025~2034年度の10年平均で3億400万円の赤字を見込み、赤字幅の縮小を目指す。

東北運輸局長は会津線のほか、青い森鉄道・青森県の青い森鉄道線、秋田内陸縦貫鉄道の秋田内陸線、由利高原鉄道の鳥海山ろく線、JR東日本の只見線、三陸鉄道の北リアス線・リアス線・南リアス線についても、鉄道事業再構築事業の実施計画を今年2025年1月30日に認定した。

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