広島電鉄は10月23日、電車・バスの運賃改定と運賃・定期券制度などの変更を実施すると発表した。電車は全線で均一運賃に統一。バスは広島市内均一エリアを拡大する。区間によっては大幅な値上げになるが、スマートフォンアプリなどによる乗車・決済サービス「MOBIRY DAYS(モビリーデイズ)」の割引を強化し、実質的な値上げ幅を抑える。

広島電鉄は同日、国土交通省の中国運輸局長に鉄道・軌道事業の旅客運賃上限変更認可と一般乗合旅客自動車運送事業の上限運賃変更認可を申請した。広島市内の均一エリア拡大と運賃変更にかかる共同経営計画の変更は今後申請する。各手続きが認可された場合、広島電鉄は来年2025年2月1日に運賃を改定する方針だ。
広島電鉄の電車運賃は現在、市内線(白島線を除く、220円均一)と白島線(160円均一)、宮島線(140~230円)、宮島線市内線連絡(220~270円)に分かれている。改定後は白島線や宮島線も含め全線240円均一に統一する。
市内線は20円の値上げで、白島線は80円の値上げ。宮島線は初乗り(1区=3kmまで)が現行運賃の約1.7倍(140円→240円)と大幅な値上げになる。それ以外の区間も10~80円値上げされる。宮島線市内線連絡は1~3区(広電廿日市駅まで)が10~20円の値上げだが、4・5区は10~30円値下げされる。
MOBIRY DAYSを利用する場合は定率割引(最大10%)が適用され、市内線・白島線・宮島線市内線連絡は220円均一に。また、宮島線内のみ利用する場合は定率割引を超えて割引を行う新たな割引「MOBIRY DAYS 運賃」を実施し、値上げ幅を抑える。宮島線内で現行の所定運賃と改定後のMOBIRY DAYS 運賃を比較した場合、1~3区(10kmまで)は各区10円の値上げ。4区(10km超~14kmまで)は現行の所定運賃と同額で、5区(14km超~17kmまで)は10円の値下げになる。

バスは広島市内均一運賃エリアを拡大するとともに、現行220円から20円値上げして240円に。均一運賃エリア外の対キロ区間はおおむね30~80円値上げする。初乗りは現行170円から30円値上げの200円になる。

電車の定期券は「電車全線定期券」が新たに発売される。発売額は大人・通勤・1カ月用で9800円。これに伴い、市内線と宮島線連絡の区間定期券の発売を終了。宮島線のみ利用できる区間定期券は引き続き発売する。バスの定期券は区間式定期券の発売を終了し、新たに金額式定期券を発売する。
広島電鉄の電車と均一運賃エリアの7社のバスが乗り放題の定期券「広島シティパス」は、均一運賃エリアの拡大に対応するとともに値上げ。大人・通勤・1カ月用は1200円値上げの9500円(割引適用の場合は840円値上げの6650円)になる。
「広島シティパス」より利用できるエリアが広い「広島シティパスワイド」は、エリアはそのままで値上げ。大人・通勤・1カ月用は1000円値上げの1万5000円(割引適用の場合は700円値上げの1万500円)だ。
広島電鉄によると、少子高齢化や交通手段の多様化、広島市郊外への大型店舗進出による市内中心部への買い物客の減少で以前から利用者が減少傾向にある。電車の年間輸送人員は2019年度が5468万7000人だったのに対し、2020年度はコロナ禍の影響で3845万4000人と大幅に減少。2023年度は4739万1000人まで回復したが、コロナ禍前の87%にとどまっている。その一方で老朽化した施設の更新が必要で、近年の資材高騰や電気料金上昇の影響も受けている。賃金水準の上昇による人件費の増加も見込まれており、運賃改定を申請したという。
値上げによる増収率は定期外で13.9%。定期は通勤12.9%、通学7.4%を見込む。広島電鉄は「今後も、安全・安心なサービスの提供や更なる利便性向上を進めつつも、安定した電車事業の継続を目的とした経営の健全化を図るため、運賃の変更について申請するものです」としている。
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