東京メトロ17000系「相鉄直通」の可能性 装置を「追加」できそうなスペースはあるが

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東京地下鉄(東京メトロ)は有楽町線・副都心線に新型車両の17000系電車を導入する。8月11日、最初に完成した10両編成1本(第17101編成)が報道関係者に公開された。来年2021年2月にはデビューする予定だ。

報道公開された17000系。【撮影:鉄道プレスネット編集部】

17000系の導入に関し、とくに注目されていたのは、相模鉄道(相鉄)への乗り入れに対応しているかどうか、ということだった。

相鉄は神奈川県内の鉄道路線を運営する大手私鉄。2019年、相鉄本線の西谷駅と羽沢横浜国大駅(貨物駅のJR横浜羽沢駅に隣接)を結ぶ新線、相鉄・JR直通線が開業した。これによりJR埼京線との相互直通運転が始まり、相鉄線方面とJR渋谷・新宿方面を結ぶ直通列車が運転されている。

2022年度下期には、羽沢横浜国大駅と日吉駅(東急電鉄東横線・目黒線)を新横浜経由で結ぶ、相鉄・東急直通線も開業する予定。新横浜駅を境に西谷~新横浜間が「相鉄新横浜線」、新横浜~日吉間が「東急新横浜線」になり、相鉄線と東急線の相互直通運転が始まる予定だ。

相鉄・JR直通線と相鉄・東急直通線のルート。相鉄・東急直通線が開業すると、相鉄線と東急東横線・目黒線の直通ルートができあがる。【画像:相鉄】
相鉄線と埼京線を直通する相鉄12000系電車。【画像:しろかね/写真AC】

17000系が運用される副都心線は、渋谷駅で東急東横線と接続して相互直通運転を行っている。副都心線から東急東横線を介して相鉄線に乗り入れる可能性もありそうだが、これまで東京メトロは副都心線と相鉄線の直通について、その方針を明らかにしていなかった。

■「乗り入れ想定せず」だが……

報道公開後の取材に応じた東京メトロ車両部設計課の荻野智久課長は、「プロジェクトが各社で進行中で、運用形態が最終的にどうなるのか、今日お答えすることはできない。ただ現状、この10両編成(17000系)が相鉄のほうに乗り入れていくということを想定しているわけではない」と話した。

17000系の運転台。【撮影:鉄道プレスネット編集部】

実際、東京メトロから提供された17000系の主要諸元表を見ても、列車無線は東京メトロのほか、有楽町線・副都心線からの乗り入れ路線を運営している西武鉄道・東武鉄道・東急電鉄・横浜高速鉄道に対応したものを搭載しているが、相鉄の名前は記載されていない。他社線に乗り入れる場合、それぞれの路線の保安装置も搭載しなければならないが、荻野課長は「追加の搭載はかなり厳しいと思う」と話した。

ただ、運転室の内部を見たところ、将来的には対応できる路線を増やそうとしているのではないか、そう思えるポイントは、いくつかあった。

たとえば運転室右側の壁には、上から「東武 非常運転スイッチ」「ATC 非常運転スイッチ」「西武ATS 開放スイッチ」と記された箱が三つ並んでいるが、「西武ATS」の下にもう一つ、箱を設置できそうなスペースがある。

また、運転台の防護無線のランプは六つ並んでおり、このうち五つは「有副」「千代田」「東武」「西武」「東急 横高」と記されている。有楽町線・副都心線のほか車両基地への入出場などで走る千代田線、そして有楽町線・副都心線と相互直通運転を行っている他社線に対応しているのが分かるが、残り一つのランプには何も記されていなかった。

非常運転・開放スイッチの箱が上から「東武」「ATC」「西武ATS」の順に並んでいるが、さらに箱を一つ追加できそうなスペースがある。【撮影:鉄道プレスネット編集部】
六つあるランプのうち一つだけ路線名や乗り入れ先の会社名が記されていない。【撮影:鉄道プレスネット編集部】

現時点では相鉄線への乗り入れに対応していないとしても、将来的には対応路線を増やせるよう、各種装置を後付けで追加しやすいよう準備した形跡はうかがえる。

ちなみに、相鉄が東急線への直通用として導入した20000系電車も、運転台のATC切換スイッチに「東武」「西武」の文字が見られる。副都心線を介して東武東上線や西武池袋線に乗り入れることを想定しているのだろう。

東急線への直通用として開発された相鉄20000系電車。【画像:1201.yokohama/写真AC】

■「準備」が生かされなかったケースも

しかし、だからといって将来、東京メトロ17000系が相鉄線に乗り入れたり、相鉄20000系が副都心線経由で東武線や西武線に必ず乗り入れるとは限らない。

京成電鉄の特急スカイライナーなどで使われていたAE100形電車(1990~2016年)は、地下鉄の都営浅草線に乗り入れることを想定し、先頭部に非常用のドアを設けていた。幅が狭い地下鉄のトンネルを走る車両は、原則的には脱出用のドアを先頭部に設ける必要があるためだ。しかし、営業運転で都営浅草線に乗り入れたことは一度もなく、そのまま引退した。

西武鉄道が2019年に導入した新型特急車両の001系電車「ラビュー」も、地下鉄への乗り入れを想定して先頭部にドアを設置したが、やはり地下鉄乗り入れが具体的に計画されているわけではない。AE100形や001系に限らず、鉄道車両は将来の構想を想定した「準備」が施されることはあっても、その構想が具体化するのはもっとあとか、場合によっては実現しないこともある。

京成AE100形は都営浅草線への乗り入れを想定して先頭部にドアを設置したが、乗り入れは実現しなかった。【画像:京成電鉄】
AE100形と同様に地下鉄乗り入れを想定して先頭部にドアを設けた西武鉄道001系「ラビュー」。【画像:クリストファー/写真AC】

また、東急電鉄ウェブサイトの相鉄・東急直通線のページ(2020年8月12日時点)では、同線を整備するメリットとして所要時間の短縮を一番最初に掲げており、その例として相鉄線の二俣川駅から東京メトロ南北線と接続している目黒駅までの区間を挙げている。一方、副都心線と接続している渋谷駅からの所要時間短縮効果は、東急電鉄の営業範囲になる新横浜駅までの区間が記載されているが、相鉄線方面には触れていない。

こうしたことから、相鉄線と東急線の直通列車は、目黒経由の相鉄線~東急目黒線~東京メトロ南北線が中心になるとみられる。17000系が走る副都心線方面からの列車は、仮に相鉄・東急直通線に乗り入れるとしても、大半が新横浜止まりになるかもしれない。

とはいえ、相鉄・JR直通線も、開業前に時間短縮効果がある区間として例示されていたのは二俣川~新宿間や海老名~渋谷間だったが、開業後は渋谷や新宿より遠い、埼玉県内の大宮や川越まで直通する列車も少し運転されている。最終的に17000系の運用範囲や副都心線の運行形態がどうなるのか、関係各社の今後の動きが注目されるところだ。

17000系は来年2月にデビューする予定。【撮影:鉄道プレスネット編集部】
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