土木学会国際センターの「土木技術者の国際化実践小委員会」はワーキンググループ(WG)「海峡横断プロジェクト基礎検討WG」を設置する。「カーボンニュートラル」を加味した事業評価に加え、「海中トンネル」の調査・研究を行う。
カーボンニュートラルは二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることで排出量を実質ゼロにする取り組みのこと。小委員会は欧州の動向を受けて6月に「NetZero橋梁WG」を設置し、橋梁上部構造を対象としてカーボンニュートラルを考慮した試設計と、それらの結果に基づく基礎的な検討を行ってきた。
小委員会によると、ここまでの研究成果を発展させるため海峡横断プロジェクト基礎検討WGを設置。対象を海峡横断プロジェクトに広げるとともに、設計段階だけでなく施工段階や供用段階の維持管理も含めた事業全体に拡大する。過去の事業評価では行われてこなかった、カーボンニュートラルの評価を加味した事業評価を行う。
また、対象に加えた海峡横断プロジェクトについては海中トンネルを対象構造物とし、新たな構造技術の調査・研究にも取り組むという。
海峡横断プロジェクト基礎検討WGの活動期間は来年2025年12月までの約1年間を予定している。
海中トンネルは内部が空洞のチューブ構造物を海中に設置するトンネルのこと。小委員会は「第3の海峡横断技術として注目されている」としている。水深が深い場所では橋梁や海底トンネルに比べ低コストとされるが、チューブの固定方法など課題も多い。海峡を横断する交通路の整備方式として古くから提案されており、ジブラルタル海峡やメッシナ海峡の横断プロジェクトで検討されたことはあるが、実例はない。
日本では国鉄線を運営していた鉄道省(現在の国土交通省に相当)が1938年から1945年にかけ、朝鮮海峡トンネルの調査・検討を実施。その過程で海中トンネルも議題に上がったようだが、当時の技術では採用が困難とされ、実際は海底トンネルを基本に検討されている。
1990年には北海道大学や大手建設会社などで構成される水中トンネル研究調査会が発足。内浦湾の横断ルートをモデルケースとして研究していた。調査会が1993年時点で示していた案は、厚さ約1mの鉄筋コンクリートで囲んだチューブを使用。チューブの直径は鉄道と道路の併設が23m、道路のみの場合は11mとし、水深30mにワイヤーを使ってチューブを固定するというものだった。
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