フランス・イタリア結ぶ「世界最長トンネル」工事、国境部の掘削開始へ



フランスとイタリアを結ぶ高速鉄道トンネルの工事が進んでいる。完成すれば世界最長の鉄道トンネルになる見込み。これまでフランス・イタリア両国内の掘削工事が進められていたが、国境部の掘削工事に取りかかる。

リヨン・トリノ・ミラノ周辺の鉄道網とモンダンビンベーストンネル(赤点線)の位置。【画像:OpenRailwayMap/OpenStreetMap、加工:鉄道プレスネット】

このトンネルは「モンダンビンベーストンネル」「モンスニベーストンネル」と呼ばれる。既存の鉄道に並行するルートで山岳国境のフレジュス峠付近を貫き、モーリエンヌ(フランス)~スーサ(イタリア)を結ぶ。単線トンネル2本で構成され、最高速度は旅客列車が220km/h、貨物列車が100km/h。計画では全長57.5kmで、現在の世界最長の鉄道トンネルであるスイスのゴッタルドベーストンネル(57.1km)を抜くとみられる。

2002年に事業着手し、2019年から工事が本格化した。完成した部分の距離は今年2024年1月時点で35kmに達している。工事では7台のトンネルボーリングマシーン(TBM)を使用する計画。昨年2023年12月、4台目となるTBMがドイツのヘレンクネヒト工場で完成し、トンネルの事業主体に引き渡された。このTBMは直径10.4m、長さ334mで、重さは3200t。国境部の工区で2本のうち1本のトンネルを18km掘削する。

モンダンビンベーストンネルの国境部の掘削で使われるTBM。【動画:TELT】

トンネルの完成は2032年の予定。フランス南東部のリヨンとイタリア北部のトリノを結ぶ全長約271kmの高速鉄道ルートの一部になる。

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