スイス「世界最長トンネル」で脱線事故 当面は単線運行と旧ルートへの迂回に



スイスにある世界最長の鉄道トンネル「ゴッタルドベーストンネル」で脱線事故が発生し、1週間が過ぎた8月19日時点で不通となっている。復旧には相当な時間がかかる見込みだ。

スイス国鉄のヴァンサン・デュクロCEOがX(Twitter)で公表した脱線事故現場の写真。ゴッタルドベーストンネル(西側トンネル)で貨物列車が脱線した。【画像:ヴァンサン・デュクロ】

スイス国鉄(SBB)の発表や地元紙『ターゲス・アンツァイガー』などの報道によると、事故は8月10日午後に発生。2本ある単線トンネルのうち、西側のトンネルを走っていた貨物列車の編成中16両の貨車が脱線した。これにより西側トンネルのレール(約8km)や枕木(約2万本)が損傷。東側トンネルと西側トンネルをつなぐ通路も損傷した。死傷者はいない。

旅客列車は旧ルートの観光路線に迂回して運行。所要時間はゴッタルドベーストンネル経由より1時間ほど長くかかる。貨物列車は8月23日から、東側トンネルに南北両方向の列車を走らせる単線運行で再開する予定という。

SBBは旅客列車も東側トンネルを走れるようにできるかどうか検討中としている。復旧には数カ月かかる見込み。『ターゲス・アンツァイガー』などによると、今年2023年内の復旧は難しい情勢という。

事故現場では積み荷とみられるものが散乱している。【画像:ヴァンサン・デュクロ】
レールや枕木も激しく損傷している。【画像:スイス国鉄】

ゴッタルドベーストンネルはアルプス山脈のゴッタルド峠付近を南北に縦断する鉄道トンネル。全長約57kmの単線トンネル2本で構成される。

ゴッタルド峠はドイツのフランクフルト方面とイタリアのミラノ方面を結ぶ幹線物流ルート上にある。1882年には鉄道が開通したが、4000m級の山が連なる難所で急カーブと急勾配が連続し、輸送力が小さいという課題を抱えていた。

ゴッタルドベーストンネルの位置。【画像:OpenRailwayMap/OpenStreetMap、加工:鉄道プレスネット】

輸送量の増加に伴い、勾配が緩い直線ルートの長大トンネルを建設する計画が浮上した。2000年代に入って工事が本格化し、2016年にゴッタルドベーストンネルとして開通。日本の青函トンネル(全長約53.9km)を抜いて世界最長の鉄道トンネルになった。このトンネルが開通する前に整備された旧ルートの鉄道も観光路線として維持されている。

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