つくばエクスプレス「土浦延伸」検討へ 茨城県が正式決定、さらなる延伸も「議論」



茨城県の大井川和彦知事は6月23日、つくばエクスプレス線(TX)の同県内の延伸構想について、土浦方面への延伸に一本化して検討を進める方針を正式に発表した。茨城空港への延伸の可能性についても含みを持たせた。

JR常磐線の土浦駅とTXの列車(右上)。【撮影・加工:草町義和】

茨城県は2018年に策定した総合計画でTXの県内延伸を盛り込み、2050年ごろの構想として土浦・茨城空港・水戸・筑波山の4方面を延伸先として示した。昨年度2022年度は延伸先の一本化を検討。今年2023年3月、第三者委員会が土浦案を最善とする提言書を取りまとめた。

これを受けて茨城県は、パブリックコメントを5月に実施。283の個人・団体が約540件の意見を提出し、県内延伸に賛成の意見は82%だった。延伸先についての意見は土浦方面が44%で最も多く、茨城空港方面の25%、水戸方面の7%、筑波山方面の5%が続いた。延伸自体に反対の意見は12%で、東京方面への延伸を求める意見は2%あった。

TXの茨城県内の延伸方向として比較検討された4案。【画像:茨城県】
パブリックコメントで寄せられた意見書の分類。8割以上が県内延伸に賛成し、4割以上が土浦方面への延伸を求めた。【画像:茨城県】

こうした結果を踏まえ、茨城県は延伸の検討先を正式に発表。「TX県内延伸の方面は土浦方面」「JR常磐線と接続する駅は土浦駅」とし、今後はこの案で具体化に向けた検討を進めるとした。一方で土浦延伸の実現後は「空港の着陸制限の緩和等、空港を取りまく状況が変化した場合、改めて茨城空港延伸について議論する」とし、将来のさらなる延伸に含みを持たせた。

茨城空港への延伸は土浦延伸の実現後に議論するとした。【撮影:草町義和】

東京圏の鉄道ネットワークの整備は、交通政策審議会(交政審)が2016年4月に策定した答申第198号『東京圏における今後の都市鉄道のあり方について』に沿って進められているが、TXの茨城延伸は盛り込まれていない。大井川知事は6月23日の記者会見で「(TXの茨城延伸を)交政審の答申に位置づけていくということが、この段階では大きな一つのステップになる」と話した。

当面は土浦方面への延伸を目指す方向性が正式に決まったが、実現に向けてのハードルはひじょうに高い。第三者委の検討によると、4案の事業費は1300億~4800億円と膨大で、年間の収支はいずれも赤字。費用便益比(B/C)も4案すべてで社会的利益が事業費を下回る「1」未満だ。そのなかで土浦延伸は最も「マシ」というレベルに過ぎず、年間収支は3億円の赤字。B/Cも4案中最大の0.6だが1は超えていない。

TXはもともと起点の秋葉原駅から東京駅への延伸が構想されており、交政審が2016年7月にまとめた調査結果では、B/Cが1.2とされている。B/Cが「1」未満の茨城県内延伸とどちらを優先するか、沿線の東京都や埼玉県、千葉県などとの調整も含め今後の動きが注目される。

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