土木学会は9月24日、本年度2024年度の「土木学会選奨土木遺産」として土木施設14件を選定したと発表した。鉄道関係では「奥行臼の交通施設群」「黒川橋梁(上り線)」「覚王山ずい道」「犬山橋」「大谷~大津間の開業時の鉄道遺構」「阪神甲子園球場・枝川橋梁」「目の字形ラーメン橋-志谷川橋梁、日向川橋梁」の7件が選ばれた。
「奥行臼の交通施設群」(北海道別海町)は、別海村営軌道(1971年全線廃止)の風連線・奥行臼停留所跡地で保存されている施設や車両。北海道開拓の一環として建設された殖民軌道(簡易軌道)で、鉄道法規は適用されなかった。土木学会によると完成年は1910~1964年。「近現代の根釧地方の開拓と酪農振興、人々の定住に貢献した交通土木施設が、各年代のシステムとして一箇所に現存する唯一の遺産群」と評価した。
「黒川橋梁(上り線)」(栃木県那須町~福島県白河市)は、JR東日本が運営する東北本線・豊原~白坂の県境部に架かる鉄道橋で、国鉄時代のルート変更工事により1920年に完成。「近代の鉄道技術を伝える貴重な鋼ワーレントラス橋で、重厚感漂う壮大な石張り橋脚が連続する圧倒的スケールの優美な鉄道橋梁」と評価した。
「覚王山ずい道」(名古屋市)は、名古屋市営地下鉄東山線の池下~覚王山にある覚王山トンネルで1963年に完成。「都市部における国内初の開放型手掘り式シールド工法、円形断面シールドと鉄筋コンクリート製セグメントを採用した地下鉄トンネル」と評価した。シールド延長は上り線が356.7m、下り線が387.8mで、コンクリート製セグメントの外径は6400mmだ。
「犬山橋」(愛知県犬山市~岐阜県各務原市)は、名鉄犬山線・犬山遊園~新鵜沼の県境部を流れる木曽川に架かる橋で1925年に完成。3径間鋼下路曲弦ワーレントラス橋で長さは223.15m、支間長は73.15mだ。鉄道と道路の併用橋だったが2000年に鉄道専用橋に改修された。オベリスク様の親柱が残る。
「大谷~大津間の開業時の鉄道遺構」(滋賀県大津市)は、東海道本線(旧線)の馬場(現在の膳所)~大谷に建設された逢坂山トンネルなどの施設。1880年までに完成したが、1921年には東海道本線のルート変更により使われなくなった。「初めてわが国の技術者・技能者だけで建設された明治13年の鉄道遺構で、わが国の鉄道技術の自立を示す貴重な土木遺産」と評価した。
「阪神甲子園球場・枝川橋梁」(兵庫県西宮市)は、甲子園球場と阪神本線の枝川橋梁をあわせて認定。「我が国最古の本格的野球場と地域拠点の鉄道駅を支える橋梁で、廃川敷に計画・開発された『甲子園開発』を象徴する貴重な施設」として評価した。
枝川橋梁は近くの河川(枝川)の埋立後に設けられた阪神甲子園線(1975年廃止)・道路と立体交差し、球場最寄駅の甲子園駅を支える橋梁として1925年に完成。阪神電鉄によると、当時としては珍しかった鉄骨柱にコンクリート被覆した特徴的な構造を持ち、デザイン性の高い装飾を施しているという。
「目の字形ラーメン橋-志谷川橋梁、日向川橋梁」(島根県川本町)は、JR西日本が運営していた三江線(2018年廃止)の鹿賀~因原に残る志谷川橋梁と因原~石見川本に残る日向川橋梁。国鉄時代の1934年に完成した。建設に使用する鉄筋コンクリートを節約しつつ強度を確保するため、漢字の「目」の字のような形状を採用したといわれる。「三江線でのみ採用された極めて珍しい目の字形鉄筋コンクリートラーメン橋」と評価した。
土木学会選奨土木遺産の認定は「土木遺産の顕彰を通じて、歴史的土木構造物の保存に資すること」を目的に2000年度に創設。社会や土木技術者にアピールするとともに、まちづくりへの活用や貴重な土木遺産の保護を目指す。完成から50年が経過した土木施設を対象に、毎年20件程度を選出している。
※2024年9月26日2時28分:情報を追加しました。
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