西武山口線の蓄電池機関車「製造の地」で展示 現存2両のうち1両、もう1両は動態保存



西武リアルティソリューションズと西武鉄道は9月2日、西武鉄道の所沢車両工場跡地に建設した商業施設「エミテラス所沢」(埼玉県所沢市)に、かつて西武山口線を走っていた車両を設置して展示すると発表した。引退から40年を経て「製造の地」に戻る。

「おとぎ電車」と呼ばれ親しまれた西武山口線のB11形(先頭)。【画像:西武鉄道】

エミテラス所沢で展示される車両はB11形蓄電地機関車の1両。1階外構部分に設置し、エミテラス所沢がグランドオープンする9月24日以降に公開する予定だ。

エミテラス所沢では所沢車両工場跡地に建設されたことにちなみ、西武線の所沢駅と所沢車両工場を結んでいた引込線があった場所の一部にレールを設置。訓練用として使われていた2000系電車の運転シミュレーターもシミュレーター機能を省いた状態で設置する。

これらの設置は4月に発表されていたが、これ以外にも所沢車両工場の歴史を示す「レガシー」の設置を検討しているとしていた。西武リアルティソリューションズと西武鉄道はB11形の設置により「これで全てのレガシーが揃い、『エミテラス所沢』の新しいシンボルとして事績を伝えていきます」としている。

エミテラス所沢の外観(2024年7月31日)。【画像:西武鉄道】

西武山口線は現在の西武園ゆうえんちやかつてのユネスコ村など村山貯水池(多摩湖)周辺のレジャー施設を結ぶ遊戯施設として整備され、1950年に使用開始。「おとぎ電車」などと呼ばれ、1952年には鉄道法規に基づく鉄道路線になった。

当初は軌間762mmのナローゲージで、小型の蒸気機関車と蓄電地機関車が遊覧客車を牽引して走っていた。しかしゴムタイヤで走る案内軌条式鉄道への転換工事に伴い40年前の1984年に休止し、それまで使われていた車両も引退した。

B11形は西武山口線用の蓄電池機関車としてB11~B15の5両が製造され、このうちB12~B15の4両は西武鉄道の所沢車両工場で製造された。凸型だが丸みを帯びた車体が外観上の特徴だった。引退に伴い3両が解体され、現存するのはB13・B15の2両のみ。2両とも大井川鉄道(静岡県)が譲り受けたが実際に使われたことはなく、のちに静岡県浜松市内の宗教団体が譲り受けていた。

昨年2023年、鉄道模型メーカーの関水金属がB13・B15の2両を譲り受けた。西武鉄道の広報部によると、このうちB15を関水金属から譲り受けてエミテラス所沢に設置するという。B13は関水金属が同社の鶴ヶ島工場(埼玉県)に整備した庭園鉄道「関水本線」で動態保存する計画だ。

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