熊本空港アクセス鉄道「方法書」縦覧開始 地下水に配慮して建設



熊本県は熊本空港アクセス鉄道について、同県の環境影響評価条例に基づき環境影響評価方法書の縦覧を開始した。

熊本空港からのトンネルを抜けて肥後大津駅に向かう列車のイメージ。【撮影:草町義和、加工:鉄道プレスネット】

熊本空港アクセス鉄道は豊肥本線の肥後大津駅と熊本空港を結ぶ鉄道の計画。豊肥本線に乗り入れて熊本~熊本空港を約40分で結ぶ。熊本県は2027年度の工事着手、2034年度の開業を目指している。事業費は概算で410億円。

都市計画対象事業としての名称は「(仮称)都市高速鉄道阿蘇くまもと空港アクセス鉄道整備事業」で、種類は鉄道事業法に基づく鉄道の建設・改良の事業。対象地域は大津町・菊陽町・西原村・益城町になる。

方法書によると、肥後大津駅と熊本空港を結ぶ全長約6.8kmの鉄道を単線で整備。駅施設は起点の肥後大津駅と終点の阿蘇くまもと空港駅(仮称)で、中間には信号所(行き違い施設)の設置を予定している。ほかに中間駅を設ける構想が浮上しているが、今回の方法書には盛り込まれなかった。

鉄道整備のルートを含む事業実施区域は、昨年2023年12月公表の計画段階環境配慮書で一定以上の幅を持つ「ルート帯」で示したが、今回の方法書でも幅1.5km程度のルート帯で示した。肥後大津駅から大分方面に少し進んでから南下し、白川を渡ったあたりから南西に向きを変えて熊本空港に入る。信号所の位置は示していない。熊本県は「(方法書手続きの次の段階になる)準備書の手続きの中で環境影響の回避・低減を考慮し、ルート帯の絞り込みを行っていく考え」としている。

方法書で示された熊本空港アクセス鉄道の事業実施地域(赤点線)。【画像:熊本県】

鉄道の構造は既設の肥後大津駅が地上駅で、その先の住宅地と水田耕作地、白川、集落の各地域はかさ上げ式(高架橋)を採用。高遊原台地は地下トンネルで進む。トンネルの工法は未定。方法書では山岳トンネルの工法として一般的なNATM工法に加え、シールド工法と開削工法を例示している。終点の空港駅は地上式と地下式の両方を検討している。

各地域で想定される鉄道の方式と構造。【画像:熊本県】
高架橋区間(左)とトンネル区間(右)のイメージ。【画像:熊本県】

熊本地域は水道水源のほぼ100%を地下水で賄っており、鉄道の整備に当たっては地下水の保全が焦点になる。方法書によると、高架橋の基礎構築は地下水の帯水層に影響がない範囲で工事を行う予定。高遊原台地部のトンネルは帯水層よりも上にトンネルを設置する予定という。

方法書の縦覧期間は9月12日まで。方法書に対する意見書は熊本県土木部道路都市局都市計画課が直接提出やファクス、電子メール、郵送で受け付けている。提出期限は9月26日17時15分(郵送は9月26日当日消印有効)まで。

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