近江鉄道「上下分離」認定 計画期間10年、営業収支均衡と活性化目指す



国土交通省は3月29日、近江鉄道や滋賀県などが申請していた鉄道事業再構築実施計画を4月1日付けで認定すると発表した。同日、近畿運輸局長が認定書を手交する予定。近江鉄道線が上下分離方式の経営に移行する。計画期間は4月1日から2024年3月31日までの10年間。

近江鉄道の電車。【撮影:草町義和】

実施計画は今年2024年2月29日、近江鉄道と一般社団法人近江鉄道線管理機構、滋賀県、東近江市、彦根市、近江八幡市、甲賀市、米原市、日野町、愛荘町、豊郷町、甲良町、多賀町が申請していた。

実施計画の対象となるのは、近江鉄道線を構成する本線・米原~貴生川47.7kmと八日市線・八日市~近江八幡9.3km、多賀線・多賀~多賀大社2.5km。現在は近江鉄道が第1種鉄道事業者として施設を保有し、列車を運行している。

4月1日からは、近江鉄道線管理機構が第3種鉄道事業者として施設を保有。近江鉄道は第2種鉄道事業者として管理機構から施設を無償で借り入れて列車を運行する体制になり、公有民営の上下分離方式に移行する。

これにより営業収支の均衡を図るほか、滋賀県や沿線自治体は近江鉄道線の運営を支援。交通系ICカードなどキャッシュレス決済の導入や鉄道施設の整備・更新、地域と連携したイベントの実施などで近江鉄道線の維持・活性化を目指す。

認定された実施計画による事業スキーム。【画像:国土交通省】

近江鉄道線は1994年以降、赤字経営が続いている。輸送密度も2016年度時点で1865人だったのに対し、コロナ禍が本格化する前の2019年度は1786人に減少。2022年度は1630人だった。

近江鉄道は自社単独の経営努力だけでは事業継続が困難だとし、2016年から滋賀県や沿線自治体との交渉に入った。2020年12月、関係各者は公有民営方式による上下分離経営への移行を決定。施設を保有する一般社団法人の設立や地域交通法に基づく手続きを進めてきた。

上下分離方式への移行時点ではサービス面での大きな変更はなく、運賃も据え置く。近江鉄道は上下分離方式への移行を記念した臨時列車を2024年4月1日から4月7日にかけ全線で運行する予定だ。

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