米国司法省は7月30日、全米鉄道旅客公社(アムトラック)が運行している旅客列車を法令に違反して遅延させているとして、貨物鉄道会社のノーフォーク・サザン鉄道と同社を所有するノーフォーク・サザン社をコロンビア特別区連邦地方裁判所に提訴したと発表した。

司法省によると、アムトラックの旅客列車が遅延しているのはニューヨーク~ニューオーリンズを結ぶ約2200kmの鉄道路線「クレセントルート」。このうち約1800kmをノーフォーク・サザン鉄道が管理しており、同社が貨物列車を運行しているほか、アムトラックの旅客列車を含むすべての列車の運行を管理している。
米国の法令では、ノーフォーク・サザン鉄道に対しアムトラックの旅客列車を貨物列車より優先させるよう義務付けている。しかし、ノーフォーク・サザン鉄道は貨物列車の運行を優先させて旅客列車の遅延をたびたび引き起こしており、アムトラックの経営にも悪影響を及ぼしている。
1月にはノーフォーク・サザン鉄道の運行指令員がアムトラックの旅客列車を低速の貨物列車の後方を走らせ、これにより旅客列車は1時間近く遅れた。別の機会にも運行指令員が3本の貨物列車を通過させているあいだ、アムトラックの旅客列車を1時間以上待たせた。
昨年2023年のクレセントルートの年間旅客輸送人員は約26万6000人。ノーフォーク・サザン鉄道が管理する線路を走るクレセントルートの南行き旅客列車のうち、目的地に時間通りに到着したのは24%だったという。

米国では大陸横断鉄道などの長距離鉄道が複数の民間会社により建設された。第2次世界大戦後、航空・自動車交通の発達で旅客輸送が衰退し、各地の長距離鉄道を運営する民間会社は旅客営業を廃止した。米国は1971年、旅客輸送の維持を目的に公共企業体のアムトラックを設立。アムトラックが貨物専業となった民間会社から線路を借りる形で全米の旅客列車を一元的に運行する体制に変わった。
1987年の日本国鉄の分割民営化では、6地域に分割したJR旅客会社が各地域の線路を保有して旅客列車を運行。貨物列車はJR貨物が各地域のJR旅客会社から線路を借りて一元的に運行しており、米国とは逆の運営体制になっている。
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