日本最古の電車とされる「N電」こと京都の路面電車を静態保存している平安神宮(京都市)は、電車の修繕費を調達するためのクラウドファンディング(CF)を始めた。
平安神宮によると、電車は車体に少し触れただけで塗装がはがれ落ち、車内のつり革やシートの生地も同様の状態。車体を保護するために設置した屋根も老朽化が進んでいる。また、現在の展示場所は有料区画の南神苑のため、文化庁や鉄道マニアから無料区画での展示を求める意見が寄せられているという。
こうしたことから平安神宮は、創建130年(2025年)の記念事業の一環として電車を修繕するとともに、保存場所を無料区画の応天門西側に移設することを計画。総費用は2億1400万円で、このうち5000万円を第一目標としてCFで調達する考えだ。支援の申し込みはCFサイト「READYFOR」で受け付けている。返礼品は車内掲示広告のレプリカなど。
この電車は明治末期の1911年、梅鉢鉄工場が製造。車体は木造で台車は米国ブリル社、モーターも米国のゼネラル・エレクトリック社のものが使われた。京都市内の路面電車を運行していた京都電気鉄道が52号車として導入。平安神宮によると、現存する電車のなかで製造年代が最も古いという。
大正期の1918年、京都市が京都電気鉄道を買収して京都市電に編入。京都電気鉄道の電車は車両番号に「N」を追加し、京都市電のほかの電車の番号とかぶらないようにした。これにより旧・京都電気鉄道の電車は「N電」と呼ばれるようになり、52号車もN52号車に改番した。
戦後の1955年には再び番号を変更して2号車に。1961年には旧・京都電気鉄道の路線が全線廃止されてN電も引退し、これに伴い2号車が平安神宮に移設され静態保存されている。2020年には重要文化財に指定された。
「N電」はこのほか、博物館明治村(愛知県犬山市)と梅小路公園(京都市)で動態保存されている。大阪府交野市の霊園施設「ハピネスパーク交野霊園」でも静態保存されており、法要施設として活用されている。
《関連記事》
・京都の路面電車「N電」再利用の法要施設が完成 大阪交野の霊園に設置
・広島電鉄1900形「初引退」2両のさよなら運行とイベント 製造67年、もと京都市電