芸備線・備中神代~備後庄原(岡山県・広島県)について存廃も含め議論する再構築協議会の幹事会が7月10日に開かれ、議論するうえで必要なデータを収集し分析する「調査事業」の実施が決まった。芸備線の存続を前提にした実証事業の内容も並行して検討する。
この調査事業では、芸備線や沿線地域の現状と将来の姿を把握。とくにJR西日本と沿線の岡山県・広島県・新見市・庄原市のいずれも保有していないデータの収集と分析を中心に実施する。
芸備線の「ポテンシャル」に関する分析も行う。具体的には(1)潜在需要の顕在化や二次交通との連携強化による需要の増加、(2)客単価や沿線地域内の消費額のアップなどによる収入増加、(3)駅などを地域拠点として活用することによる需要創出効果、(4)芸備線が鉄道として存在することの価値――を重点項目として調査・分析を実施する。
このうち(4)の「芸備線が鉄道として存在することの価値」は、利用者数の増減などとは関係なく、単に芸備線が存在するだけの状態での価値の有無を分析するものになる。ただし「データとファクトに基づき議論できるもの」を基本にするとしている。
再構築協議会の今後のスケジュールの想定も幹事会で示された。2024年度の下半期から2025年度にかけては「芸備線の可能性を最大限追求」する期間(A期間)と位置付け、A期間に続いて「最適な交通モードの在り方を検討」する期間(B期間)を設ける。
A期間では調査事業を今年2024年10月ごろから開始。芸備線の存続を念頭に置いて同線の可能性を追求する実証事業の内容も並行して検討する。2025年度からは実証事業を開始するほか、調査事業を引き続き実施して専門的な分析などを実施する。
A期間からB期間に移行する段階では「最適な交通モード」の事業内容の検討を開始し、B期間の開始時点で「最適な交通モード」の実証事業を開始。あわせて再構築方針案を協議し、協議開始から3年以内(2026年度末ごろ)をめどに方針を決定する。鉄道の存廃や鉄道を廃止した場合の代替交通機種の方針が見えてくるのはA期間からB期間への移行期になるとみられる。
芸備線は伯備線の備中神代駅から中国山地を横断して広島駅に至る全長159.1kmのJR線。このうち備中神代~備後庄原の68.5kmは利用者が非常に少ない。輸送密度は2022年度で備中神代~東城が89人、東城~備後落合が20人、備後落合~備後庄原が75人。JR西日本は2023年10月、改正地域交通法に基づき備中神代~備後庄原について再構築協議会の設置を要請。今年2024年3月に国土交通省や沿線自治体、JR西日本で構成される再構築協議会が設置され、鉄道の存廃も含めた議論が行われている。
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