成田空港ワンターミナル化で「新駅整備」「1タミ駅閉鎖」2タミ駅と東成田駅は?



有識者や国、千葉県、成田空港周辺の自治体などで構成される「『新しい成田空港』構想検討会」がこのほど『『新しい成田空港』構想 とりまとめ 2.0』を策定した。同検討会が昨年2023年3月に策定した中間とりまとめのバージョンアップ版。これを受け検討会事務局の成田国際空港社が7月3日、国土交通省の航空局長に報告した。

成田空港の施設再配置のイメージ。現在の第2ターミナルの南側に新しい旅客ターミナルを整備し、三つに分かれている旅客ターミナルを一つに集約する「ワンターミナル化」を図る。【画像:成田国際空港】

この構想はC滑走路の整備(2029年3月末使用開始予定)後に実施する成田空港の施設の再配置について、検討会としての考えをまとめたもの。現在三つに分かれている旅客ターミナルを一つの新しい旅客ターミナルにまとめる「集約ワンターミナル方式」を採用し、分かりやすさや乗継利便性の向上、運用の効率化などを図る。これに伴い鉄道や道路などの再配置も行う。

新旅客ターミナルは現在の第2ターミナルの南側に整備。ターミナルの規模は延べ面積で95万~115万平方m程度、固定ゲート数は100程度を想定した。ターミナルの形態は「ロングピア型」を基本に検討を深めるものとした。ロングピア型はターミナル中心部から搭乗ゲートを並べた長い桟橋(ピア)を延ばして設置する方式。『とりまとめ 2.0』によると、コンコースの本数を少なくでき分岐を減らせるため、旅客にとってわかりやすい。エプロンベイも広くでき、航空機の走行性などの点でも優位という。

成田空港の再配置により整備される各施設の位置。新旅客ターミナルはロングピア型を基本に検討する。【画像:成田国際空港】
新旅客ターミナル内のイメージ。【画像:成田国際空港】

ターミナル内の移動はピア型では「おもに歩行での移動が想定される」としつつ、利便性などの観点から「適切な輸送力を備えたモビリティ」の導入が望まれるとし、その走行ルートは専用空間を設けることが望ましいとした。一方で「ICTや自動運転技術など、日進月歩の進化が見られることから、最新の動向を注視し、検討する必要がある」とし、モビリティの具体的な機種は今回示していない。

鉄道アクセスについては、新旅客ターミナルに直結する新駅を整備する。JR東日本の成田線空港支線と京成電鉄の本線・成田スカイアクセス線が乗り入れている現在の空港第2ビル駅(2タミ駅)から新旅客ターミナルの新駅まで延伸。これに伴い現在の第1ターミナルに設けられている成田空港駅(1タミ駅)は閉鎖する。現在のJR線と京成線はそれぞれ単線だが複線化も想定する。

第1ターミナルの成田空港駅は閉鎖される。【撮影:草町義和】

新旅客ターミナルと新駅の整備は3段階に分けて実施する。第1段階では新旅客ターミナルの半分と新駅を整備して使用を開始し、第1ターミナルの成田空港駅を閉鎖。新旅客ターミナル~第2ターミナル~第3ターミナルを暫定的なコンコースで接続し、一部は一体的に運用する。第2段階では新旅客ターミナルを速やかに増築し、ターミナルの本館機能を新旅客ターミナルに集約。ここまでの事業費は貨物施設なども含め8000億円程度を想定している。

第3段階では外部環境や経営環境に応じ、第1ターミナル跡地に新旅客ターミナルの本館やコンコースを増築する。

新旅客ターミナルの整備の進め方。3段階に分けて実施する。【画像:成田国際空港】

『とりまとめ 2.0』は工事スケジュールの想定も示した。新旅客ターミナルは2020年代から「前捌き工事」という準備的な工事を実施し、C滑走路供用開始後の2030年代前半から第1段階の工事を開始。2030年代半ばには第2段階の工事に移って2030年代後半に完了させる。鉄道は2020年代後半から新駅の整備を開始し、新旅客ターミナルの第1段階の工事が完了する2030年代半ばに使用を開始する。線路の複線化は需要に応じて順次実施するものとした。

成田空港の年間取扱能力は2024年6月時点でエプロンが34万回、旅客ターミナルが5700万人、貨物上屋が240万t。第1・第2段階の完了時ではエプロン40万回、旅客ターミナル6600万人、貨物上屋280万tに増強される見込みだ。第3段階の完了時点ではエプロンが50万回、旅客ターミナルが7500万人、貨物上屋350万tになる。

輸送量の予測と各施設の想定規模・整備スケジュールのイメージ。【画像:成田国際空港】

空港第2ビル駅や京成東成田線・芝山鉄道線の東成田駅の扱いについて、『とりまとめ 2.0』は明確には触れていない。成田国際空港社によると、空港第2ビル駅は旅客ターミナルの機能が新旅客ターミナルに集約された第2段階で、一般客の利用がなくなる状態を想定している。東成田駅の扱いは未定で、検討会でもこれまで議論されていないという。両駅とも今後の鉄道事業者との協議次第になりそうだが、閉鎖だけでなく空港従業員が利用する駅として存続させることも含め検討されるとみられる。

空港第2ビル駅はワンターミナル化で「一般客が使わない状態」になることを想定している。【撮影:草町義和】
京成東成田線と芝山鉄道線が乗り入れる東成田駅の扱いは未定。【撮影:草町義和】
現在の成田空港内に設置されている駅の位置。【画像:国土地理院地形図、加工:鉄道プレスネット】

このほか、『とりまとめ 2.0』は鉄道アクセスについて、東京都心側が過密ダイヤになっていることや成田空港付近の区間が一部単線になっていることなど現状の課題を挙げ、「鉄道アクセスの利便性向上・輸送力増強が必要不可欠」とした。ターミナルの再編に伴う新駅の整備や空港周辺の複線化、都心方面への利便性向上・輸送力増強などについて「鉄道事業者等の関係者も入った検討の場」の設置を求めた。

《関連記事》
成田空港「ワンターミナル」で鉄道どうなる? ルート、駅の位置、輸送力、速度
地方空港で「京急電鉄」の切符を買ってみた 公式キャラ風の券売機、今後どうなる?