山陽新幹線の筑豊新駅、直方市「再検討」開始 17年前に頓挫、事業費どう調達?



福岡県直方市が山陽新幹線・小倉~博多に構想している新駅の実現に向けて再び動き出している。17年前に頓挫したが、同市は新駅周辺の開発の進展など状況が変化していることを踏まえ、改めて検討を始めた。

直方市が1991年に総合計画を策定したときの新駅のイメージ。【画像:直方市】

新駅の設置が想定されているのは、JR西日本の山陽新幹線とJR九州の筑豊本線(福北ゆたか線)が立体交差する直方市内の植木地区。福北ゆたか線の筑前植木駅から北(折尾寄り)へ約480mの地点で、山陽新幹線の既設駅からの距離(実キロベース)は小倉駅が約21km、博多駅が35kmになる。

新駅の想定位置。【画像:国土地理院地図、加工:鉄道プレスネット】

直方市は6月20日の市議会で、新駅の整備により福岡市や北九州市へのアクセスが向上すると答弁。さらに新幹線を活用した荷物輸送が近年注目されていることに触れ「北九州・中遠・嘉飯地区の物流拠点機能も新駅に期待する役割の一つ。たとえば生鮮果物や野菜などの積出駅としての役割も将来的に期待できるのではないか」と述べた。

直方市は「新駅は多額の事業費が見込まれるという調査結果により凍結したが、前回調査から相当の期間が経過している」として事業費の再調査を今後実施する考え。広域での経済波及効果も大きいとして福岡県主体の調査として行うよう同県に働きかけていく考えを示した。一方で検討などの具体的なスケジュールは「(関係者間の)協議が必要」との考えを示すにとどまった。

新駅は「筑豊駅」「筑豊新駅」「東福岡駅」「福岡中央駅」などの仮称で呼ばれており、遅くとも1980年代に民間レベルでの構想が浮上。1991年には直方市が第3次総合計画で新駅の設置構想を盛り込み、現在の福北ゆたか線との結節も図って「県央中核都市としての機能集積を促進する」とした。

しかし直方市は多額の事業費がかかるとして2007年に構想を事実上凍結。2021年に策定した第6次総合計画には新駅の検討を引き続き行うとする文言を盛り込んだものの、具体的な取り組みやスケジュールなど詳細は記していなかった。

その一方、植木地区では地域企業の研究開発支援などを行う直鞍産業振興センター(ADOX福岡)が2002年にオープン。2011年には植木地区に隣接する鞍手町に九州自動車道の鞍手インターチェンジ(鞍手IC)が開設された。本年度2024年度からは福岡県が直方・鞍手新産業団地の造成工事を開始。デジタルデータの拠点施設(データセンター)を同団地に設けることも考えられている。

こうしたことから直方市は2022年12月と今年2024年3月、公共交通のあり方についての勉強会を開催。6月には植木地区へのデータセンターなどの企業誘致に注力するため、植木地区への新駅設置について再び検討を始めたと発表した。

新駅の想定位置とその周辺。【画像:国土地理院地図、加工:鉄道プレスネット】

事業費は1993年の試算で160~180億円、2006年の試算では201億円とされ、今回の再検討でも事業費が大きな課題になる。直方市は2024年6月20日の市議会で「資材の高騰などでコストのさらなる増加も予想される」としつつ、「企業版ふるさと納税やクラウドファンディングなど新たな財源確保の仕組みも出てきており、可能性としては広がっている要素もある」と答弁。さまざまな方法で財源確保の検討を進める考えを示した。

新駅の想定地の近くには高速バス乗り場を併設した九州縦貫自動車道の直方パーキングエリア(直方PA)があり、新駅と高速バス乗り場の接続も考えられる。直方市は市議会で「九州自動車道の事業者側にもメリットになり、(新駅整備の)費用負担の協議材料になりうる」との見方も示した。

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