大井川鉄道の次期社長「鳥塚氏」内定 ラサ専用線のC10に「恩返し」



大井川鉄道の次期社長に鳥塚亮氏が内定した。6月28日の株主総会と取締役会を経て就任する見通し。鈴木肇社長は監査役に就任するほか、グループ会社の大鉄アドバンスの社長を引き続き務める。

大井川鉄道のSL列車を牽引するC10形8号機。【画像:taso583/写真AC】

鳥塚氏は東京都出身で1960年生まれ。明治大学を卒業後、大韓航空やブリディッシュ・エアウェイズを経て鉄道ビデオ販売会社を設立した。2009年、いすみ鉄道(千葉県)の公募社長に就任。訓練費用の自己負担を条件とした運転士の育成や国鉄気動車を譲り受けて観光列車として運行するなどユニークな活性化策を展開した。

2018年に退任し、2019年からはえちごトキめき鉄道(新潟県)の社長を務めているが、今年2024年6月中に退任する見通し。

いすみ鉄道の列車。【画像:Hrc_hiro/写真AC】
えちごトキめき鉄道の列車。【撮影:草町義和】

鳥塚氏も自身のブログを6月12日に更新。次期社長の内定について直接は触れず、中学生だったときの1976年、ラサ工業宮古工場(岩手県宮古市)の専用線で運用されていたC10形蒸気機関車8号機を見に行ったときのエピソードを紹介した。

C10形は国鉄のタンク式蒸気機関車。8号機は1930年に製造され、東北本線や高崎線、会津線で運用された。1962年にはラサ工業が譲り受けて宮古工場の専用線で運用。1986年に廃車されたが復元改修され、1990年まで宮古の地で観光列車として運行された。その後、大井川鉄道が譲り受け、現在も同社のSL列車を牽引している。

鳥塚氏はブログで「私にチャレンジする気持ち、チャンスをつかむ気持ち、前に進む気持ちを教えてくれたこの機関車(C10形8号機)が、まだ現役で走っている。そして、今、決して良い状況に置かれてはいないことも知りました」と話した。

そのうえで「私を導いてくれたこの機関車、私の人生を幸せなものにしてくれたこの機関車に、今こそ私は恩返しをするべきではないでしょうか」「この機関車のために、そしてこの機関車を今でも大切に保存して可愛がってくれている鉄道のために、私は自分の経験と能力と人脈をすべて注ぎ込んで感謝の意を伝えたいと思います」と述べた。

大井川鉄道は大井川本線の一部が2022年9月の水害で運休しており、現在も再開のめどは立っていない。鳥塚氏が復旧に向け会社をどうかじ取りするかが注目される。

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