沖縄鉄軌道の支線交通「LRT・BRT導入」「モノレール延伸」複数ルートを調査へ



沖縄県は「沖縄鉄軌道」に接続する支線系の公共交通(フィーダー交通)の検討を本年度2024年度に実施する。軽量軌道交通(LRT)やバス高速輸送システム(BRT)の導入に加え、沖縄都市モノレール線(ゆいレール)の延伸も想定。複数のルートを設定して実現の可能性や導入の効果などを調べる。

LRTのイメージ(オーストリア・ウィーンの路面電車)。【撮影:草町義和】

LRT・BRTについては、沖縄鉄軌道を那覇市から名護市まで整備することを想定して仮のルートを設定。そのうえで沖縄鉄軌道とフィーダー交通の連絡地点となる交通結節点になりえるエリアを選定し、導入可能性のある25路線程度を抽出して調査する。

データ収集の対象自治体は那覇市・浦添市・宜野湾市・北谷町・沖縄市・うるま市・恩納村・名護市。とくに「那覇市(駅)~那覇市国場~国道329号~与那原MICE予定地」「名護市(駅)~北部テーマパーク~海洋博記念公園」「北谷町(駅)~嘉手納町~読谷村」の3路線を必須検討路線として調査し、同時に那覇空港からのルートも検討する。

BRTのイメージ(インドネシア・ジャカルタのBRT)。【撮影:草町義和】
沖縄鉄軌道の仮のルート(赤)と交通結節点(黒丸)、LRT・BRTの必須検討路線(青点線)。【画像:国土地理院地図、加工:鉄道プレスネット】

ゆいレールの延伸は米軍の普天間基地跡に駅を設けると仮定。てだこ浦西~真栄原~普天間基地跡と古島~国道330号~真栄原~普天間基地跡の2ルートで延伸の可能性を調査する。

ゆいレールの既設区間(黒)と延伸案(赤点線)。【画像:国土地理院地図、加工:鉄道プレスネット】
ゆいレールのてだこ浦西駅。【撮影:草町義和】

沖縄県は「沖縄鉄軌道とフィーダー交通の連携が「利便性の高い公共交通ネットワークの構築を図るうえで重要」としてフィーダー交通の調査を実施する考え。2024年度末まで調査を行い、各ルートごとに事業費や社会的な経済効果を示す費用便益比(B/C)の概算を取りまとめる方針だ。

沖縄鉄軌道は沖縄本島の那覇市~名護市などを結ぶ鉄道新線の構想。国の内閣府や沖縄県が調査を実施しているが、過去の内閣府の調査ではB/Cが「1」を上回ったことがなく、事業費の割に社会的効果が低いとみられている。このためフィーダー交通の整備など沖縄鉄軌道に利用者を誘導する施策が重要な課題の一つといえる。

2022年に策定された国の沖縄振興基本方針では「全国新幹線鉄道整備法を参考とした特例制度を含め調査及び検討を進め、その結果を踏まえて一定の方向を取りまとめ、所要の措置を講ずる」との文言が盛り込まれており、整備新幹線と同様の財源スキームを採用して沖縄鉄軌道を整備することも考えられている。

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