那覇市LRT「東西・南北+支線」標準軌、車両基地は地下 整備計画素案の詳細



那覇市は3月28日、同市が計画している路面電車タイプの軽量軌道交通(LRT)の整備計画素案を公表した。これまで検討していた東西・南北の2ルートに支線を追加した格好。2026年度の計画策定を目指す。

LRTのイメージ(オーストリアの首都ウィーンの路面電車)。【撮影:草町義和】

導入ルートは「東西ルート本線」「東西ルート支線」「南北ルート」の三つとした。東西ルート本線はこれまで東西ルートとして検討されてきたルートで、県庁北口から南風原町にある県立南部医療センター付近を結ぶ約5km。これに県庁北口~若狭海浜公園付近の約1kmを結ぶ東西ルート支線が加わる。南北ルートは真玉橋付近~新都心の約5km。現在の寄宮交差点付近で東西ルート本線と交差する。同交差点とその周辺は「真和志地域拠点」として位置付けられている。

東西ルート本線と南北ルートは複線軌道、東西ルート支線は単線軌道とし、道路中央部に併用軌道を敷設する想定。停留場は約500m間隔で設置し、車両基地は立体都市公園制度を活用して松山公園の地下に整備する考えだ。松山公園は東西ルート支線の沿線にある。

素案で示された那覇市LRTの想定ルートや車両基地の位置。【画像:国土地理院地図、加工:鉄道プレスネット】

最高速度は40km/h、停留場の停車時間は30秒を想定。所要時間は東西ルート本線が約19分、東西ルート支線が約8分、南北ルートが約17分とした。1時間あたりの運行本数は本線でピーク時(7~9時と17~19時)が10本(6分間隔)、オフピーク時(9~17時と19~22時)は6本(10分間隔)、早朝・深夜(6~7時と22~0時)は4本(15分)とした。支線は7~22時が3本(20分間隔)、早朝・深夜が2本(30分間隔)としている。

車両は全長約30mの3両編成とし、東西に12編成、南北に9編成の導入を想定。低床式を採用してバリアフリー化を図るほか、まちづくりとの調和を図ったデザインを採用する。また、大きい窓にすることで那覇市内の街並みを楽しめるようにする。

基本仕様案によると、軌間は1435mmの標準軌を採用し、定員は160人(座席は50席)。車体寸法は長さ29.52m・幅2.65m・高さ(パンタグラフ折りたたみ時)3.905mとした。2023年8月に開業したライトライン(宇都宮市・栃木県芳賀町)のHU300形電車に準じているが、軌間はライトライン(1067mm)より広く、車両の高さも高い。

ライトラインのHU300形。【撮影:草町義和】

事業スキームは公設民営の上下分離方式を想定。那覇市が軌道整備事業者として施設を整備、保有し、第三セクターなどの軌道運送事業者に施設を貸し付けて運行する。

概算建設費は東西ルートが本線・支線の合計で約320億円。このうち約180億円は国費からの補助を想定する。すべてのルートを整備する場合は約480億円(このうち約270億円は国費)。2021年度の試算では、東西ルート(本線・支線)で1日約1万5000人の利用があり、全ルートを整備した場合は1日約2万1000人が利用があるとした。

2021年度に試算した年間の収支計画によると、東西ルートは運輸収入が約7億8000万円、運行経費が約5億5000万円で単年度収支は2億3000万円の黒字。南北も含めた全ルートでは運輸収入が約11億2000万円、運行経費が約9億7000間年で、黒字幅は1億5000万円に縮小する。

一方、社会的な効果も含めた費用便益分析(B/C)では、東西ルートのみの場合で30年が1.01、50年が1.2なのに対し、東西・南北の両ルートを整備した場合は30年で1.15、50年で1.35と効果が大きくなった。

那覇市は真和志地域のまちづくりを早期に進めるため、東西ルートの本線と支線を先行整備する考え。近日中に素案に対するパブリックコメントを実施する。関係機関との協議や合意形成を経て、2026年度末までに整備計画を策定する方針だ。同市は「既存のバスやタクシー、モノレールと連携することで、人々の移動をよりスムーズに、さらに住みよいまちへと発展させていきたいとの思いをもっております」とし、LRT整備の効果をアピールしている。

那覇市は「自家用車に頼り過ぎた車社会の現状から、渋滞や公共交通の衰退、環境問題など、様々な問題を抱えている」として、LRTの導入を構想。2015年度から導入可能性調査を実施した。2019年度には中心市街地・真和志地域・新都心地域の3拠点を結ぶ基幹的公共交通としてLRTを位置付け、複数のネットワーク案のなかから東西・南北の2ルートで構成される案を選定して検討を進めてきた。

那覇市はLRTの導入空間について、基本的には幅の広い4車線の道路を想定。道路中央の2車線に併用軌道を敷設してLRTの専用空間を確保する考えだ。東西ルート本線は4車線以上ある道路がすでに整備されている部分が多い。ただLRT整備に伴う車線の減少も想定されており、自動車交通からLRTへの転換が課題になる。

一方、南北ルートは真和志地域拠点から沖縄都市モノレール線(ゆいレール)・おもろまち駅付近にかけ幅の広い道路が未整備の部分が多い。軌道整備の前に道路整備が必要になりそうだが、道路から独立したLRT専用の軌道を整備することも考えられそうだ。

東西ルート本線の想定ルートに含まれる県道222号の開南交差点付近を走る路線バス。【撮影:草町義和】

沖縄本島では戦前の1914年、県営鉄道や馬車軌道に加え、現在の那覇市域を横断する路面電車(沖縄電気軌道)が開業。しかし1929年に運行を開始した乗合バスとの競合で利用者が減少し、1933年に廃止された。県営鉄道や馬車軌道もバスとの競合や太平洋戦争の沖縄戦による破壊で1945年までに消滅している。

2003年には那覇市内を横断する沖縄都市モノレール線(ゆいレール)が軌道法に基づくモノレールとして開業。宮古島では鉄道事業法に基づくロープウェイが2015年から運行されているが、2本のレール上を車両が走る軌道交通は沖縄県内には現在存在しない。

那覇市のLRTは計画が順調に進めば2040年代初頭にも開業するとみられる。仮に2040年に開業するとした場合、2本のレール上を走る沖縄県内の軌道交通が沖縄県営鉄道の消滅以来95年ぶりに復活。那覇市域の路面電車としては107年ぶりに復活することになる。

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