吾妻線の一部「廃止」も視野に協議へ JR東日本



JR東日本の高崎支社は3月22日、吾妻線の一部区間について「沿線地域の総合的な交通体系に関する議論」をしたいと群馬県と沿線町村に申し入れたと発表した。バス転換による鉄道廃止や上下分離方式の導入による鉄道維持も視野に入れ協議したい考えとみられる。

吾妻線の終点・大前駅。【画像:えこま/写真AC】

高崎支社が議論の対象としたのは、吾妻線・渋川~大前55.3kmのうち長野原草津口~大前13.3km。申入書によると、この区間は自家用自動車へのシフトや人口減少などの影響を受け、利用者数がJR東日本発足時(1987年)から7割ほど減少した。鉄道の特性である大量輸送のメリットを発揮できていないという。

このため高崎支社は「本当に地域の皆さまにとってお役に立てる交通モードが現在の鉄道なのか、存続や廃止という前提を置かない議論が必要」とし、群馬県と沿線の長野原町、嬬恋村に対し、協議への参加を検討してほしいと呼びかけている。

吾妻線の位置。JR東日本は長野原草津口~大前について議論を申し入れている。【画像:OpenRailwayMap/OpenStreetMap、加工:鉄道プレスネット】

吾妻線の全体の輸送密度は国鉄時代の1977~1979年度で4338人。当時の国鉄再建法では原則として4000人未満の路線をバス転換による鉄道廃止か国鉄以外の事業者(第三セクターなど)への移管による鉄道維持の対象としていたため、吾妻線は国鉄線のまま存続した。

しかしJR東日本が発足した1987年度は3304人で、コロナ禍が本格化する前の2019年度は2208人、2022年度は1932人と大幅に減少。とくに長野原草津口~大前の利用者が少なく、1987年度は1000人を大きく割り込み791人、2019年度は320人、2022年度は263人に落ち込んでいる。

高崎支社は「ご利用されるお客さまにとって利便性が向上する交通体系のあり方を総合的な観点から検討する必要がある」としつつ「当社グループの強みを活かして、観光や生活ソリューション事業、Suica、MaaS関連の事業等により沿線地域の発展にも引き続き貢献していく所存」とし、交通モードが変わっても地域の観光開発などに関与していく意向を示している。

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