石川県の県庁所在地で北陸地方の中核的な都市といえる金沢市。ここには「日本最後の駅」があるという。いったいどんな駅なのか、「日本最後」というだけあって、やはり「終末感」が漂っているのか。ちょっと気になって訪ねてみることにした。
2月1日の午後、金沢駅前の地下にある北鉄金沢駅へ。北陸鉄道が運営する浅野川線のターミナルで、2本の線路と頭端式ホームが設けられている。地下ホームに停車しているのは03系電車。もと東京メトロ日比谷線の車両で、ここだけ見れば東京の地下鉄に迷い込んだかのようだ。
列車は13時30分に発車。すぐトンネルを抜けて左にカーブし、北陸新幹線とIRいしかわ鉄道線の線路をくぐって単線の線路を北上する。窓の外は民家や工場らしき建物で遮られていて、人口密度はかなり高そうだ。ただ、空はどんよりとした雲で覆われていて小雨まじり。どことなく終末感が漂っている気がしないでもない。
列車は七ツ屋、上諸江、磯部と各駅に停車していく。いずれも単式ホーム1面1線の無人駅。平日の昼間ということもあってか乗り降りも少ない。北鉄金沢駅を発車して5分、割出駅で列車を降りた。ホームにはあんどん式の駅名標が鎮座していて、ひらがなで駅名の読みである「わりだし」が大きく描かれている。
日本にある鉄道駅の読みを五十音順で並べた場合、この割出駅が最後になる。つまり「日本最後の駅」。駅の住所は諸江町だが、駅から西へ少し歩いたところに割出町がある。
駅の構造はここまで通ってきた駅と同じ単式ホーム1面1線。ホームも短く小さな駅だ。線路が二手に分かれる部分（ポイント）はない。鉄道の世界で「割出」といえば、ポイントで一方向に線路が開通した状態で閉鎖された側の線路からポイントに進入する現象のことを言うが、ここでは割出など起きようがない。
ただ、構内の敷地はやや広く取られていて、線路をもう1本敷けるだけの余裕がある。かつては上下の列車が行き違いできるよう2本の線路が敷かれていてポイントも設置されていたが撤去された。現在、この敷地の一部には駐輪場が整備されている。
ホームは背の低い上屋で覆われており待合室もある。ホーム南端には切符売場らしき建物はあるが、窓口はシャッターで閉じられていて人の気配は感じられない。シャッターの周囲には小さなホワイトボードが多数貼り付けられていて、定期券の発売額がマジックで書き込まれているほか「この時間は窓口の影響はしていません」「本日、午後営業は、15:20～18:30」といった注意書きもある。
周囲は典型的な住宅街で特段の観光要素があるわけではなく、近くに集客施設があるわけでもない。もちろん、天気を除けば終末感などみじんも感じられない。
五十音順で最後になる駅名であることを示す案内なども見えないが、たとえば「日本最後の駅」とでも記した標柱を立てておけば、ここを訪ねる物好きが増えるような気がする。記念切符やグッズの「元ネタ」にもなりそうだ。北陸鉄道の鉄道事業はコロナ禍などで経営が悪化しているし、多少なりとも路線の活性化に寄与するかもしれない。
ちなみにJR線の駅に限ると、五十音順で最後になるのは京浜東北線の蕨駅（わらびえき、埼玉県蕨市）。かつては函館本線の蕨岱駅（わらびたいえき、北海道長万部町）が最後だったが、2017年に廃止されている。
※補足：過去には五十音順で最後になることを記した割出駅の入場券やカードなどが発売されたことがあります。（2024年2月6日17時27分）
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