上野動物園モノレールの代替「新たな乗り物」公募開始 鉄道事業法の適用は?



東京都建設局は11月24日、上野動物園の東園と西園を結んでいた上野懸垂線(上野動物園モノレール)に代わる「新たな乗り物」の企画提案の募集を開始すると発表した。2026年度末ごろの使用開始を目指す。

小型モノレールの例(韓国・インチョンの月尾海列車)。【画像:Trainholic/wikimedia.org/CC BY-SA 4.0】

建設局が示した基本条件などによると、新たな乗り物は「コンパクトな乗り物(小型モノレール等)」を前提とし、上野動物園モノレールと同様に東園と西園を結ぶルートでの整備を求めている。敷設延長は350m程度。

東園寄りはモノレールのルートとその周辺域を新たな乗り物の整備可能エリアとしている。西園寄りはモノレールの一部が整備できないエリアに入っており、モノレールのルートの東側~南側を新たな乗り物の整備可能エリアとした。東園の乗り場はモノレール東園駅舎と同じ場所に設置することを想定。西園の乗り場はモノレール西園駅舎より南側の不忍池付近に設けることを想定している。どちらの乗り場も施設の2階以上に設ける。

新たな乗り物の整備可能エリア(紫)と整備不可エリア(赤)。

基本性能などは「モノレールと同等以上」としつつ「単純な移動手段としてではなく動物園を楽しむ乗り物として輸送時間に配慮すること」を求めている。輸送能力は1時間あたり500人以上で輸送時間は1分30秒以上~最長5分程度まで。稼働日数は年間約320日、稼働時間は1日7時間以上としている。

車両の内装は「乗車中の乗り心地や居心地の良い空間等、利用者の快適性も踏まえたデザインとすること」を求めており、車両の外観や軌道も「飽きのこないデザインとするとともに、周辺環境との調和を図り、動物園内の景観に配慮すること」を求めている。また、工事に際しては来園者や飼育動物への配慮を踏まえた工程にすることを求めた。

このほか、建設局は「関連する可能性のある法令等」として都市公園法や建築基準法、都市計画法、道路法、鉄道事業法などを挙げ、これらの法令を順守した企画提案を行うよう求めている。

鉄道事業法を挙げたことについて、建設局は取材に対し「鉄道事業か否かを判断するのは国土交通省であり、法の適用範囲に含まれるかどうか確認する必要があることから、関係法令として鉄道事業法を記載した」と回答。実際に鉄道事業法の適用対象となるかどうかは、乗り物の選定後に国土交通省が乗り物の構造や営業範囲などを確認して判断することになりそうだ。

新たな乗り物の公募の実施要領などは建設局のウェブサイトで公開されている。今後のスケジュール予定は、質問書の受付が今年2023年12月8日までで回答は12月22日。参加表明書は12月1日から28日まで受け付ける。企画提案書の受付期間は来年2024年1月4日~2月2日。3月上旬ごろのヒアリングを経て、3月下旬ごろには乗り物を選定して発表する計画だ。その後、2024~2026年度に乗り物・駅舎の設計と整備工事を行い、2026年度末ごろの使用開始を目指す。

2023年12月27日付けで廃止される上野動物園モノレール。【撮影:草町義和】

上野動物園モノレールは1957年に開業した、動物園の東園と西園を結ぶ全長0.3kmのモノレール。施設の老朽化のため2019年10月限りで営業を休止しており、今年2023年12月27日付けで正式に廃止される。東京都はモノレールの代替となる新たな乗り物の検討を進めていた。

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