東九州新幹線「2ルート」ほぼ同等も移動区間で差 大分県が調査結果を公表



大分県は11月21日、東九州新幹線の建設ルートとして考えられている2ルートを比較した調査の結果を公表した。福岡市~大分市の所要時間や費用対効果(B/C)はほぼ同等だったが、関西方面や九州内のほかの都市からの所要時間では差が出た。

東九州新幹線のイメージ(画像生成AIを使用)。【作成:鉄道プレスネット/Bing Image Creator】

大分県が調査したのは、東九州新幹線の建設予定区間のうち福岡市~大分市のルート。山陽新幹線の小倉駅で分岐して日豊本線に並行するルートと、九州新幹線の新鳥栖駅で分岐して久大本線に並行するルートについて、所要時間や事業費などを調べた。

福岡(博多)~大分で新たに整備が必要になる区間の距離は、日豊本線ルートが約110km。久大本線は約106kmで、久大本線ルートがやや短い。各種構造物の割合は日豊本線ルートがトンネル39%、高架橋32%、路盤18%、橋梁10%と想定。山間部を通る久大本線ルートはトンネルが75%を占め、それ以外は高架橋が19%、路盤1%、橋梁5%とした。

東九州新幹線の日豊本線ルート(青)と久大本線ルート(赤)。【画像:大分県】

博多~大分の所要時間は日豊本線ルートが47分なのに対し、久大本線ルートは46分でわずかに短い。現在の所要時間は博多~(山陽新幹線)~小倉~(日豊本線)~大分で小倉駅での乗換時間を含まない場合でも最短1時間半ほど。新幹線を整備すれば少なくとも40分ほど短縮される計算になる。

九州内のほかの都市から大分までの所要時間は、熊本~大分が日豊本線ルート79分、久大本線ルート56分で、久大本線ルートが20分ほど短い。長崎~大分も日豊本線ルート127分、久大本線ルート89分で、久大本線ルートが40分近く短くなる。一方、関西方面からの所要時間は新大阪~大分で日豊本線ルートが156分なのに対し、久大本線ルートは30分ほど長い187分になった。

概算事業費は日豊本線ルートが8195億円で、久大本線ルートはそれより140億円ほど高い8339億円になった。1日の利用者数は2060年の開業を想定して推計。日豊本線ルートが2万3973人で、久大本線ルートはそれより1800人ほど少ない2万2163人とした。

費用対効果は2045~2059年を建設期間、2060年を開業年と想定。時間軸上の価値を補正する社会的割引率を2%で計算した場合、日豊本線ルートが1.27、久大本線ルートが1.23で、いずれも社会的便益が費用を上回る「1」以上になった。

大分県は日豊本線ルートについて、現在運行されている在来線特急列車からの転移に加え、関西方面からの空路からの転換を見込めるとし、久大本線ルートは長崎や熊本など九州内との移動からの転換を見込めるとしている。一方、いずれのルートでも並行在来線の維持や地域間格差の拡大などの課題があり、在来線特急の継続も不確実としている。

東九州新幹線は1973年、福岡市~大分市付近~宮崎市付近~鹿児島市を結ぶ基本計画が決定。それ以外の経由地は基本計画では定められていない。従来は日豊本線ルートが考えられていたが、今年2023年1月に開かれたシンポジウムで久大本線ルートを推す声があがったことから、大分県が調査を行った。

大分県は今回の調査について「今後の議論を活性化させていくための基礎資料として活用していく想定」としている。同県は11月20日、有識者で構成される「大分県広域交通ネットワーク研究会」を設置。東九州新幹線や豊予海峡ルート、中九州横断道路など大分県内を通る広域交通ネットワークの構想について整備効果や課題などを研究する。

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