大阪モノレール線「延伸区間」歩いてみた 開業まで6年、工事どこまで進んだ?



大阪モノレール線を南に延伸する工事が本格的に始まってから3年が過ぎ、一部の場所では支柱や軌道桁も見られるようになった。開業目標時期までは残り6年ほど。10月16日、延伸区間のルートに沿って歩き、工事の「進み具合」を見て回った。

6年後に延伸される予定の大阪モノレール線。【撮影:草町義和】

パナソニック工場跡に追加の新駅

大阪都心部の淀屋橋駅から京阪本線の電車に揺られて20分弱、門真市駅に到着。駅の南側に出ると、西に大阪モノレール線・門真市駅の高架駅舎が見えた。

現在の大阪モノレール線は大阪空港~門真市の21.2kmを結び、終点の門真市駅で京阪本線の線路をまたいでいる。延伸区間はここから南下し、近鉄奈良線の線路と交差する瓜生堂駅(仮称)までの8.9kmを結ぶ。

大阪モノレール線の門真市駅。【撮影:草町義和】

大阪モノレール線の既設区間の大半は高速道路の近畿自動車道と、その下道である大阪府道2号大阪中央環状線に並走するルートで、それは延伸区間も同じだ。近畿自動車道と大阪中央環状線の東側車線のあいだに設けたスペースや、あるいは東側車線上、東側車線のさらに東側に複線の高架軌道を架設する。延伸区間の駅はすべて島式ホーム1面2線の高架駅として計画されている。

大阪モノレール線の既設区間(黒太線)と延伸区間(赤、駅名は仮称)。【画像:OpenRailwayMap/OpenStreetMap、加工:鉄道プレスネット】

門真市駅の先も高架軌道桁が南に延びているが、これは既設区間が門真市駅まで開業したときに設けられた引上線で、駅から200mほどで途切れる。その先、モノレールの支柱や軌道桁を建造している様子はなかった。

門真市駅の先に延びる軌道は同駅の開業時に整備された引上線。【撮影:草町義和】
引上線の先は工事が始まっていない。【撮影:草町義和】

引上線の末端部から大阪中央環状線の東側歩道を100mほど歩くと、広大な土地に真新しい大規模商業施設があるのが見えた。ここはかつてパナソニックの工場があった場所。再開発により「三井ショッピングパーク ららぽーと門真」と「三井アウトレットパーク 大阪門真」が一体的に建設され、今年2023年4月にオープンしたばかりだ。

ここもモノレールの工事が行われている様子はない。ただ、大阪中央環状線と商業施設のあいだが広くなっており、現在は駐輪場が設けられている。ここには松生町駅(仮称)が建設される計画で、スペースの確保が実質完了しているようだ。ちなみに松生町駅は当初の計画になかったが、工場跡地の再開発に伴い新駅として追加された。

大規模商業施設(右)と大阪中央環状線(左)のあいだにあるスペースに松生町駅が設けられる。【撮影:草町義和】

軌道桁の架設も始まる

ここを過ぎると近畿自動車道と大阪中央環状線のあいだにクレーンなど作業機械が置かれたスペースが見え、そのうち構築中のモノレールの支柱が見えてきた。

モノレールの軌道桁を支えることになる支柱が見えてきた。【撮影:草町義和】
構築中の支柱だけでなくほぼ完成した支柱も。【撮影:草町義和】

支柱の周辺には「ご迷惑をおかけします」「モノレールの支柱建設工事を行っています」と記された看板が多数設置されている。一部の看板はなぜか、背景に姫路モノレールの車両らしきイラストが描かれていた。

なぜか姫路モノレールの車両が描かれている看板。【撮影:草町義和】

こういう「遊び心」は面白い。ただ、姫路モノレールは1966年に開業したが利用者が非常に少なく、わずか8年後の1974年に休止。1979年には正式に廃止されている。ちょっと縁起でもないかな、とも思う。

そうこうしているうちに完成したばかりの支柱がずらずらと並ぶようになり、軌道桁が架設された部分も現れた。軌道桁の背後に長い煙突が伸びているから、ゴミ焼却場の大阪広域環境施設組合鶴見工場(建替のため2023年3月末に休止)の近くになる。せいぜい100mくらいの長さしかないが、軌道桁が姿を現しているということは、工事が最盛期に入りつつあるようだ。

100mほど架設された軌道桁。【撮影:草町義和】

高架道路が重なる場所に駅

軌道桁が支柱に載った部分を過ぎると、近畿自動車道と第二京阪道路が接続する門真ジャンクション。両道が上空で交差し、さらに二つの高速道路をつなぐ高架道路が円を描くようにして空で重なっているのは圧巻だ。その下には大阪中央環状線と国道1号、大阪市道の花博通が接続する花博記念公園口東交差点があり、多数の自動車が交錯している。

高架道路が重なる門真ジャンクション。【撮影:草町義和】

ここには門真南駅(仮称)が設けられる計画。花博記念公園口東交差点の東側、高架道路の下に潜り込むようにして駅施設が整備され、近くにある大阪メトロ長堀鶴見緑地線の終点・門真南駅との連絡も図られる。いまのところモノレールの構造物の姿は見えず、本格的な工事が始まった様子もない。

花博記念公園口東交差点の東側(左)にモノレールの門真南駅が設けられる。【撮影:草町義和】

門真ジャンクションを過ぎると門真市から大阪市に入る。軌道桁はおろか支柱も見えないが、軌道を設けるスペースの整地はほぼ完了しているようだ。

近畿自動車道と大阪中央環状線のあいだに軌道を敷設するスペースがある。【撮影:草町義和】

課題はJR学研都市線との連絡

大阪市と大東市の市境が入り組んでいるあたりから再びモノレールの支柱が見えるようになり、東大阪市内へと入っていく。ちなみに大阪市内と大東市内には駅は設置されない。

完成した支柱の並びを見ながら東大阪市内へ。【撮影:草町義和】

そのうち、大阪中央環状線をまたいで近畿自動車道の下をくぐるJR学研都市線の姿が見えてきた。モノレールの軌道は学研都市線の線路をまたぎ、交差部の南側に鴻池新田駅(仮称)を設ける計画だ。

学研都市線の北側は支柱の構築中。学研都市線の架道橋をまたぐため、脇の近畿自動車道と同じくらいの高さだ。一方、駅が設けられる南側は大阪中央環状線の車線変更らしき工事は行われていたが、支柱などの構造物はまだ見えない。

学研都市線の北側で姿を現した支柱。【撮影:草町義和】
学研都市線の南側にはモノレールの鴻池新田駅が設けられる。【撮影:草町義和】

モノレール鴻池新田駅の予定地と学研都市線の鴻池新田駅は500m近く離れている。両駅を結ぶ「乗継経路」を学研都市線に沿って整備することが考えられているが、もう少し近づけることはできなかったものかとも思う。

幹線道路から外れて市役所へ

ここからは建設用地の造成工事が一部行われているだけで、軌道桁も支柱も見えない状態が1.5kmほど続く。

本庄口西交差点。モノレールの建設スペースらしきものは見えるが軌道桁や支柱は見えない。【撮影:草町義和】

トラックターミナル入口交差点を過ぎたところで、モノレールのルートは近畿自動車道・大阪中央環状線から離れて南東に向かう。幅が2~3mほどしかない狭い川の両側に幅2~3mほどの狭い小道があるだけで、現状は複線のモノレール高架軌道を整備できるようなスペースがない。

近畿自動車道・大阪中央環状線から離れて荒本駅の予定地へ。草に覆われた川の南側(右)にモノレールを建設する。【撮影:草町義和】

計画では川の南側の道路を拡張する形でモノレール導入スペースを創出する。ここを200mほど歩くと南側に広い空き地が現れ、道路の拡幅工事と一体的に行われているモノレールの工事現場が現れた。

道路の拡張と一体的に行われているモノレールの工事現場。【撮影:草町義和】

さらに500mほど進むと、目の前に広大な空き地が現れた。その脇には地上24階の威容を誇る東大阪市役所の総合庁舎が見える。空き地にはかつてショッピングセンターのイオン東大阪店があったが2021年3月限りで閉店。当時の建物は跡形もなく、現在は整地を終えてモノレール工事の着手を待っている状態だ。ここに荒本駅(仮称)が整備され、近鉄けいはんな線の荒本駅との連絡も図られる。

東大阪市役所総合庁舎の脇にある広大な空き地。ショッピングセンターの跡地に荒本駅が設けられる。【撮影:草町義和】

細長い車両基地の先に近鉄線

モノレールは荒川駅から2車線の生活道路を導入スペースとし、500mほど進んだところで再び近畿自動車道・大阪中央環状線に合流する。

意岐部東交差点の少し前まで来ると、大阪中央環状線と近畿自動車道のあいだに幅広のスペースが姿を現し、土木作業機械が稼働しているのが見える。複線の高架軌道を設けるにしてもかなり広いスペースだが、これは実際には瓜生堂車両基地(仮称)のスペース。営業列車が走る軌道は大阪中央環状線の東側車線上に架設される計画だ。

かなり幅広な瓜生堂車両基地のスペース。【撮影:草町義和】

このスペースの幅は20m強といったところ。車両基地としては逆に狭い気もするが、計画では意岐部東交差点から延伸区間終点の瓜生堂駅まで約750mの長さがあるから、面積でみれば狭いわけではない。

車両基地の工事現場を脇に見ながら歩いて行くと、目の前に近鉄奈良線の架道橋が見えてきた。延伸区間は近鉄奈良線にぶつかったところで終点となり、近鉄奈良線の線路の上方にモノレールの瓜生堂駅が設置される。軌道桁は将来の延伸も想定して近鉄奈良線との交差部からさらに200mほど延びる計画だ。

瓜生堂駅が設けられる近鉄奈良線との交差部。【撮影:草町義和】

近鉄奈良線の既設最寄駅(八戸ノ里駅と若江岩田駅)までの距離は800~900mほどあり、鴻池新田駅よりもアクセスに難がある。そのため近鉄奈良線にも新駅を整備して連絡を図る計画だが、いまのところモノレール瓜生堂駅も近鉄新駅も工事を行っている気配はなかった。

近鉄奈良線側にも新駅を整備して大阪モノレール線との連絡が図られる。【撮影:草町義和】

好調な経営背景に具体化

大阪モノレール線は大阪の郊外を結ぶ外環状型の都市モノレールとして計画され、1990年に第三セクターの大阪高速鉄道(現在の大阪モノレール)が運営する路線として千里中央~南茨木の6.7kmが開業。その後順次延伸され、1997年までに現在の大阪空港~門真市21.2kmが開業した。

現在の大阪モノレール線は1990年から1997年にかけ開業した。【撮影:草町義和】

都市モノレール法に基づく都市モノレールで、道路上の支柱や軌道桁など「インフラ部」は道路施設の一部として道路管理者(大阪府)が整備。列車の運行で必要な車両や電気設備などは「インフラ外部」として運営事業者(大阪高速鉄道)が整備した。延伸区間も都市モノレールとして計画されている。

門真市以南に延伸する構想は古くからあり、1989年に運輸政策審議会が答申した大阪圏の鉄道整備基本計画では、現在の門真市駅から門真南駅を経由して荒本・堺方面が将来の整備を検討する方向として盛り込まれた。

当時は大阪モノレール線の千里中央~南茨木がようやく開業しようとしていたころ。門真市以南の区間はしばらく動きがないまま推移した。近畿地方交通審議会が2004年に答申した「近畿圏における望ましい交通のあり方について」で、ようやく門真市~鴻池新田~荒本~瓜生堂が「中長期的に望まれる鉄道ネットワークを構成する新たな路線」として盛り込まれた。

このころ、大阪高速鉄道は利用者の増加により経営が好調で、2004年度には債務超過を解消。2015年度には累積損失を解消した。こうしたこともあって門真市以南の延伸に向けた動きが活発になり、2016年に大阪府は事業化を決めた。

鉄道法規上は2019年3月、延伸区間の軌道特許を取得。2020年4月には工事施行認可も受け、工事が本格的に始まった。総事業費は約1050億円(あとから計画が追加された松生町駅の分を除く)。2029年の開業を目指し工事が進められている。

大阪モノレール線は現在、阪急宝塚線・北大阪急行線・阪急千里線・阪急京都線・大阪メトロ谷町線・京阪本線の6路線と連絡している。延伸区間が開業すれば、大阪メトロ長堀鶴見緑地線・JR学研都市線(乗継経路を整備した場合)・近鉄けいはんな線・近鉄奈良線(近鉄新駅を整備した場合)の4路線との連絡が図られ、連絡路線は合計10路線に。大阪の東郊と北郊、大阪空港(伊丹空港)の移動時間短縮や乗換回数減少、連絡する各線が運休したときの代替ルート機能の強化が期待される。

蛍池で連絡する大阪モノレール線(上)と阪急宝塚線(右下)。【撮影:草町義和】

「世界最長の座」奪還できる?

2007年までに開業した彩都線の彩都西駅。【撮影:草町義和】

ちなみに、大阪モノレールは支線の国際文化公園都市モノレール線(彩都線)・万博記念公園~彩都西6.8km(1998~2007年開業)も運営しており、営業距離は合計28.0km。一時期は世界最長のモノレール営業路線としてギネス世界記録に認定されていた。しかし現在は2011年に開業した中国・重慶のモノレールが世界最長だ。

延伸区間が開業すると営業距離は約37kmになりそうだが、重慶モノレールは2011年の開業時点でも約39km。しかも、その後の延伸や支線の開業で総距離は約67kmに達している。大阪モノレール線はさらに堺方面への延伸も構想されているが、これが実現しても大阪モノレールの総距離は60km程度になると思われ、世界最長の座を奪い返すのは難しいようだ。

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