北上線「無料乗車」キャンペーン JR東日本初、鉄道維持につながるか



JR東日本の盛岡支社・秋田支社とJR北上線利用促進協議会は10月12日、北上線の全線開業100周年「目前」企画として無料乗車キャンペーンを実施すると発表した。JR東日本の鉄道路線で無料乗車キャンペーンが行われるのは、これが初めてとみられる。

北上駅で発車を待つ北上線・横手行きの普通列車。【撮影:草町義和】

キャンペーン期間は11月9~12日、事前に配布する乗車票を改札口で提示すれば北上線の列車に無料で乗車できる。期間中は北上線の全列車を2両編成で運行する予定だが、JR東日本などは混雑状況によっては乗車できない場合もあるとしている。

乗車票の配布期間は10月26日~11月8日で、キャンペーン当日は配布しない。乗車票の配布場所と配布時間は次の通り。利用前に添付のアンケートに必要事項を記入する必要がある。

●岩手県北上市
・北上駅西口改札(10~18時)
・北上駅観光案内所(9~18時)
・北上市役所(本庁舎・江釣子庁舎・和賀庁舎)(平日10~16時)

●岩手県西和賀町
・ほっとゆだ駅改札口(8~15時)
・湯夢プラザ観光案内所(9時~17時30分)
・西和賀町役場(湯田庁舎・沢内庁舎)(平日8時30分~17時15分)

●秋田県横手市
・横手駅改札口(10時~18時)
・かまくら館(9~17時)
・横手市役所(条里南庁舎・増田地域局・平鹿地域局・雄物川地域局・大森地域局・十文字地域局・山内地域局・大雄地域局)(平日8時30分~17時15分)

このほか、キャンペーン期間中は北上線の定期券を持っている人に記念品としてオリジナルボールペンをプレゼント。沿線の3市町は関連したイベントなどを実施する予定だ。

北上線は東北本線の北上駅と奥羽本線の横手駅を結ぶ61.1kmのJR線。来年2024年に全線開業100周年を迎える。

岩手県と秋田県をまたぐ山間部の路線で、かつては仙台~秋田・青森を同線経由で結ぶ急行「きたかみ」が運行されていたほか、秋田新幹線の工事に伴い田沢湖線が1年ほど長期運休したときは北上~秋田を結ぶ特急「秋田リレー号」が運行された。現在は普通列車のみ運行されている。

黒沢駅での上下列車の交換。【撮影:草町義和】

輸送密度は国鉄時代の1977~1979年度が2219人、JR東日本発足時の1987年度は1147人。その後も利用者は沿線の過疎化や自動車交通へのシフトで減り続けており、2013年度は379人だった。沿線自治体は2014年、JR北上線利用促進協議会を設立。北上線の通勤定期券購入者に月極駐車場の駐車料を助成してパーク&ライドの促進を図るなど活性化策を講じた。

しかし、輸送密度はコロナ禍が本格化する前の2019年度で306人、昨年度2022年度は250人で利用者の減少に歯止めがかかっていない状態だ。収支も悪く、2021年度は約15億円の赤字だった。関係者は無料乗車キャンペーンをきっかけに鉄道の維持や活性化につなげたい考えだ。

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