四国新幹線「4県一体」で推進を 徳島県の新知事が表明、岡山ルート優先整備へ



徳島県議会の6月定例会が6月16日に開会し、後藤田正純新知事が就任後初の所信表明を行った。四国を通る新幹線(四国新幹線・四国横断新幹線)は四国4県が一体になって整備に取り組む必要があると述べた。

JR四国の予土線で運行されている新幹線スタイルの気動車。【画像:ジョーナカ/写真AC】

後藤田知事は新幹線を「次世代の若者が、夢と希望にあふれた四国徳島の形を思い描くことのできる高速交通インフラ」と評価して必要性を強調。「(四国新幹線・四国横断新幹線の)整備計画への格上げが先延ばしされており、この現状を早期に打開するためには四国4県が一つになり、まずは実現可能な高速鉄道へ大きく踏み出す必要があると考えている」と述べた。

後藤田知事は4月の徳島県知事選で、現職の飯泉嘉門知事を破り初当選。5月に開かれた近畿ブロック知事会議では、「岡山ルート」「淡路島ルート」の2ルートのうち岡山ルートの整備を優先して四国新幹線・四国横断新幹線の建設を国に要望していく考えを示した。

6月9日の記者会見でも「四国で力を合わせて、二つあるうちの一つをまず進めていくということは当たり前。徳島1県が邪魔することではない」「まず岡山ルートをやるのが現実的だということに最終的には落ち着くんだと思う」と話していた。

一方で県議会の所信表明では「岡山ルート」という言葉は使わなかった。これまで淡路島ルートでの新幹線の整備を求めてきた声に配慮したとみられる。

四国を通る新幹線は1973年、全国新幹線鉄道整備法(全幹法)に基づき基本計画が決定。大阪市から徳島・高松・松山各市付近を経て九州の大分市に至る四国新幹線と、岡山市と高知市を結ぶ四国横断新幹線の2路線が計画された。しかし膨大な費用がかかることなどから基本計画の次の段階になる整備計画の手続きが行われておらず、足踏みした状態が50年近く続いている。

1985年に開通した淡路島~四国の大鳴門橋と1988年に開通した本州~四国の瀬戸大橋は、新幹線を通すためのスペースが確保されている。しかし1998年に開通した本州~淡路島の明石海峡大橋は建設コスト削減のため道路単独橋に。このため本州~淡路島は明石海峡か紀淡海峡を海底トンネルで結ぶルートの調査が実施されたが、2008年に調査予算の執行が停止されたまま。四国~九州の豊予海峡トンネルも調査が行われただけで、具体化には至っていない。

瀬戸大橋の新幹線用スペース。現在は新幹線下り線のスペース(右)に在来線上り線の線路が敷かれ、新幹線上り線のスペース(左)が空いている。【撮影:草町義和】

2010年代に入ると打開策として岡山ルートが浮上。既設の瀬戸大橋を経由して岡山と四国を結ぶ四国横断新幹線を全線整備しつつ、四国新幹線は四国内の部分のみ整備するもので、本州~淡路島と四国~九州の海底トンネルの建設を当面見送ることで事業費を抑えることが考えられるようになった。

四国4県などが参加した「四国の鉄道高速化検討準備会」が2014年にまとめた基礎調査によると、概算建設費は四国新幹線と四国横断新幹線の全線整備で4兆7000億円。岡山ルートは全線整備より3兆円以上安い1兆5300億円になるという。

四国新幹線・四国横断新幹線の岡山ルート案(赤実線)。本州~淡路島や四国~九州の海峡部の建設を当面見送ることで建設費の大幅な削減を図る。【画像:国土地理院地図、加工:鉄道プレスネット】

2017年には、四国経済連合会や四国4県などで構成される四国新幹線整備促進期成会が設立された。香川・愛媛・高知の3県関係者は岡山ルートの早期整備を主張するが、当時の徳島県の飯泉知事は関西空港など大阪圏の空港と四国を有機的につなぐ新幹線が必要などとし、大阪から淡路島経由で四国に入る淡路島ルートの整備を主張。思惑は一致していなかった。

一方で徳島県は兵庫県と共同で、大鳴門橋の新幹線スペースに自転車道を整備することを計画。本年度2023年度から事業に着手し、2027年度には使用開始の見込みだ。

大鳴門橋の新幹線スペースに整備される自転車道のイメージ。【画像:徳島県】

徳島県は新幹線の事業化の際には自転車道を撤去する考えを示しているが、実際に自転車道を整備すれば短期間で撤去するわけにはいかなくなる。この自転車道の整備を決めた時点で徳島県は事実上、淡路島ルートでの早期整備を見送って岡山ルートの優先整備に転換したといえ、後藤田知事がそれを追認した格好になったともいえる。

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