JR米坂線「復旧を第一義」新潟知事 山形知事「次の段階」言及避ける



水害の影響で一部区間が運休している米坂線(新潟県・山形県)の復旧費や工期などをJR東日本が示したのを受け、新潟県の花角英世知事と山形県の吉村美栄子知事は、鉄道の早期復旧をJR東日本に求めていく考えを明らかにした。

米坂線の運休区間に取り残された車両。【画像:田舎の単3電池/写真AC】

米坂線は米沢~坂町の90.7kmを結ぶ鉄道路線。昨年2022年8月の水害で橋梁が崩落するなど112カ所で被害が発生し、今泉~坂町の67.7kmが現在も運休中で代行バスが運行されている。JR東日本の新潟支社は今年2023年4月25日、復旧費が約86億円で5年の工期がかかると発表。自社単独での復旧は難しいとし、地元負担や路線自体の存廃も含め、5月から沿線自治体と議論する考えを示した。

新潟県側の復旧費は約31億円とされている。花角知事は4月26日の記者会見で「JRにはまず復旧を第一義に考えていただきたい」「JRが独力で復旧していただくのがベスト」としつつ「いまも国の補助制度がある。それを使えば当然地元負担もある」と述べ、現行法の枠組みでの地元負担の可能性を示唆した。

路線自体の存廃については「災害からの復旧とローカル線問題、ローカル線の将来の在り方をどうしていくかということについては、分けて考えるべき」「まずは将来の存廃ということを議論するのではなくて、今ある鉄道をどう生かしていくか、活性化の議論をまずしっかりやりましょうというのが、県のスタンス」と延べ、鉄道の維持を前提にJR東日本と協議する考えを示した。

山形県側の復旧費は約55億円の見込み。吉村知事は4月27日の記者会見で「米坂線は沿線地域にとって通学、通勤などの地域の生活を支える不可欠な交通機関。山形県と新潟県の広域的な観光交流ネットワークを形成する重要な路線でもある。これまでJR東日本に早期復旧を要望し、国に対しても要望してきた」と話した。

その一方、復旧費の地元負担は「先の話というか、いますぐ答えられることではない」とし、路線の存廃についても「まずはJR東日本から話を聞きたい。次の段階というところへのコメントは差し控えたい」として言及を避けた。

国鉄時代は廃止対象「除外線」

米坂線の輸送密度は国鉄時代の1977~1979年度で3021人。1980年に公布された国鉄再建法では原則として4000人未満の路線を廃止対象としたが、当時の米坂線はピーク1時間あたりの輸送人員が1000人以上でバス転換が難しいとされ、廃止対象から除外された。

しかし、沿線人口の減少や道路の整備などもあり米坂線の利用者はさらに減少。輸送密度はJR東日本発足時の1987年度で1214人だったのに対し、コロナ禍が本格化する前の2019年度は373人だった。

運休区間だけで見た場合、輸送密度(2019年度)は山形寄りの今泉~小国が298人で、新潟寄りの小国~坂町は169人。収支上も赤字で、100円の収入を得るのにかかる費用(営業係数)は2019年度で今泉~小国が2659円、小国~坂町が2575円だった。

米坂線の今泉駅で発車を待つ普通列車(2004年)。当時は国鉄型気動車のキハ52形(手前)やキハ47形(奥)が運用されていた。【撮影:草町義和】

並行道路は国道113号のほか、113号のバイパスとなる地域高規格道路「新潟山形南部連絡道路」が計画されている。全体計画は新潟県村上市~山形県高畠町の約80kmで、新潟寄りの荒川道路(3.6km)と山形寄りの赤湯バイパス(7.2km)が開通済みだ。赤湯バイパスに接続する梨郷道路(7.2km)も本年度2023年度中に開通予定。新潟寄りの鷹ノ巣道路(5km)と県境部の小国道路(12.7km)も事業中で、米坂線の位置づけが相対的に低下している。

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