JR九州のSL「ハチロク」58654号機が引退へ 11月「100歳」記念列車を運行



JR九州は10月24日、蒸気機関車8620形の「58654号機」の運転を1年半後の2024年3月頃で終了すると発表した。今年2022年11月18日に同機が製造から100年を迎えるのを記念し、鹿児島本線・熊本~八代で快速「SL人吉 58654号機百歳号」として運行する。

「SL人吉」を牽引する8620形の58654号機。【画像:ヒゴ清正/写真AC】

運行時刻は下りが熊本10時21分→八代11時16分、上りが八代12時10分→熊本13時04分。客車3両編成の熊本側にディーゼル機関車、八代側に58654号機をそれぞれ連結。八代発の上り列車はディーゼル機関車になる。全席指定で熊本~八代の価格(片道)は2440円。

当日はこのほか、肥薩線で「SL人吉」とともに運行されていた観光車両「いさぶろう」「しんぺい」も特急「いさぶろう1号」「しんぺい4号」として熊本~八代で運行される。運行時刻は下り「いさぶろう1号」が熊本10時55分→八代11時26分、上り「しんぺい4号」が八代12時00分→熊本12時33分。全席指定で熊本~八代の価格(片道)は2040円。

11時30分頃から12時頃にかけ、八代駅の2番線ホームと3番線ホームで「SL人吉 58654号機百歳号」と「いさぶろう」「しんぺい」の車両が同時に停車する。

「SL人吉 58654号機百歳号」「いさぶろう」「しんぺい」の指定席は一部の席を除き、みどりの窓口とJR九州のインターネット列車予約サービスで10月25日10時から発売される。

宮崎県高千穂町で静態保存されている8620形の48647号機。【撮影:草町義和】

8620形は1914年から1929年にかけ、国鉄向けに672両が製造された旅客列車用の蒸気機関車。形式名から「ハチロク」とも呼ばれる。国鉄の蒸気機関車としては貨物列車用のD51形と9600形に次いで3番目に製造数が多く、全国各地で運用された。

58654号機も「ハチロク」の1両で日立製作所が製造。100年前の1922年11月18日付けで完成し、浦上機関区や若松機関区、人吉機関区などに配置され九州の国鉄各線で運用された。1975年の廃車後は肥薩線の矢岳駅そばに設けられたSL保存館で静態保存されたが、国鉄分割民営化後にボイラーを新造するなどの大がかりな動態復元作業が行われ、1988年から豊肥本線のSL列車「SLあそBOY」として再デビューした。

肥薩線を走るSL列車「SL人吉」。【画像:tetsuo1338/PIXTA】

2005年には車軸焼けや台枠のゆがみなどの不具合が発生したため引退したが、台枠を新造しなおすなどして再び動態復元され、2009年から鹿児島本線・肥薩線の熊本~人吉を結ぶSL列車「SL人吉」として再々デビューした。しかし2020年7月豪雨の影響で肥薩線が不通になり、その後は鹿児島本線の鳥栖~熊本などで運行されていた。

JR九州は58654号機の運転終了について、部品の調達やメンテナンスを担う技術者の確保が難しくなっているためとしている。

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