北陸本線の石川県内「実質無償」譲渡 新幹線延伸で経営分離、車両は電車32両と除雪車



北陸新幹線・金沢~敦賀の延伸開業にあわせて経営分離される並行在来線の石川県内区間(金沢以西)について、JR西日本は経営を引き継ぐIRいしかわ鉄道に対し約68億円で施設や車両を譲渡する。8月17日、JR西日本と石川県が基本合意した。JR西日本の支援策などを考慮すると実質的には無償譲渡になる。

金沢駅に停車するIRいしかわ鉄道の車両。【撮影:草町義和】

基本合意によると、JR西日本が譲渡するのは北陸本線・金沢~福井県境51.5kmの土地・線路・駅舎(約58億円)と車両(約10億円)。車両は旅客列車用の電車521系32両(2両編成16本)と除雪車1両を譲渡する。

譲渡対象の簿価は北陸新幹線の延伸開業時で約94億円と想定されている。編成の長い特急列車が新幹線に移る形で廃止され、各駅に設けられた長いホームや車両基地(金沢総合車両所)の一部施設が不要になるため、JR西日本はこれらの施設の撤去費など約26億円を減額して譲渡額を約68億円とした。また、JR西日本は譲渡前に約12億円かけて線路などの修繕を行う。

このほか、JR西日本は経営分離後の支援策として運転士など約180人を10年間、IRいしかわ鉄道に派遣。IRいしかわ鉄道社員との給与の差額分として人件費の一部(約37億円)をJR西日本が負担する。また、石川県は国の地域鉄道対策事業制度を活用して約31億円の交付税措置を適用する。この結果、譲渡額は人件費と交付税の合計額で相殺され、実質的には無償譲渡になるという。

北陸新幹線敦賀延伸後の並行在来線の運営会社。【画像:国土地理院地図、加工:鉄道プレスネット】

IRいしかわ鉄道は石川県などが出資する第三セクターで2012年に設立。北陸新幹線・長野~金沢が延伸開業した2015年、並行在来線のうち石川県内の北陸本線・富山県境~金沢20.6km(営業区間は倶利伽羅~金沢の17.8km)を引き継いだ。

2024年春には北陸新幹線・金沢~敦賀が延伸開業の予定で、並行在来線の北陸本線も同じ区間が経営分離される。石川県内の金沢~福井県境(営業区間は金沢~大聖寺の46.4km)はIRいしかわ鉄道が引き継ぎ、福井県内の石川県境~敦賀(営業区間は大聖寺~敦賀の84.3km)は福井県などが新たに設立した第三セクター「ハピラインふくい」が運営する。

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