京成線の駅に残る「担ぎ台」行商専用車の終了から8年、今後どうなる?



京成電鉄の京成成田駅。1・2番線ホームの東成田・成田空港寄りには、ちょっと変わった「ベンチシート」が設置されている。

京成成田駅のホームに設置されている「担ぎ台」。【撮影:草町義和】

座面は金属製で平面。その位置は通常のベンチシートより高く、背もたれはない。ベンチシートとしては座りにくいように思えるが、そもそもこれはベンチシートではない。行商人の荷物置き場として使われているもので、その名を「担ぎ台」という。

大正末期の1923年、関東大震災の発生により東京で物資が不足するようになった。そこで京成線沿線の千葉の農家は、野菜などを入れた大きな箱を担いで京成電気軌道(現在の京成電鉄)の電車に乗り、行商人として東京へ売りに行くようになった。

そのため、ホームには大きな箱を背負ったまま置くための荷物台が設置された。行商人は大きな箱を担いでいたことから「担ぎ屋」と呼ばれ、ホームに設置された荷物台も「担ぎ台」と呼ばれるようになった。

京成は行商人の増加に伴い、行商人のみ利用できる団体列車(行商専用列車)を運転するように。野菜を運ぶことから「なっぱ電車」とも呼ばれていた。しかし1982年、利用者の減少に伴って行商専用列車の運転が終了。これ以降は一般の列車の最後尾1両を行商専用車としたが、これも2013年3月に終了した。

京成成田駅の担ぎ台は、行商専用車の終了から8年近くが過ぎたいまも残り続けている。京成電鉄によると、担ぎ台は現在、京成成田駅のほか京成酒々井・京成佐倉・京成臼井・志津の各駅に設置されている。いまも行商人が使用しているかどうかは「調査を行っているわけではないので、実際の利用状況は分からない」という。

その一方、「一般客のなかにも電車を待っているあいだ、(担ぎ台に)腰掛けている人が見受けられる」としており、現在は座面が高い「ベンチシート」としても活用されているようだ。

京成電鉄は担ぎ台の今後について検討中としつつ、「ほかの駅設備の利用状況を鑑みても、特段撤去する必要はないと考えている」としている。「なっぱ電車」の歴史をいまに伝える担ぎ台は、当面のあいだ残りそうだ。

現在は「ベンチシート」としても使われている担ぎ台。【撮影:草町義和】

ちなみに、JR成田線・湖北駅(千葉県我孫子市)のホームに7台残っていた担ぎ台はすべてが撤去される予定だったが、我孫子市は歴史的な価値が高いとして保存を要望。昨年2020年、3台を現地で保存し、残り4台は鉄道博物館で保存されることが決まっている。