京成「スカイライナー」乗ってみた 利用者「大幅減少」でも走る成田空港アクセス特急

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新型コロナウイルス感染拡大の影響で各地の公共交通も厳しい経営が続いているが、成田空港のアクセス輸送を担っている京成電鉄は、大手私鉄16社のなかでもとくに厳しい状況。国際間の移動は世界中で渡航制限が課せられており、国際便の発着が多い成田空港を訪れる人自体が大幅に減っているためだ。

人の気配がない京成上野駅で発車を待つスカイライナー。【撮影:草町義和】

12月5日、同社の成田空港アクセス特急スカイライナーに乗ってみた。

■列車が表示されない発車案内装置

チケットレス予約サービスで下り成田空港行き「スカイライナー29号」の予約を取り、京成上野駅へ。地下のコンコースには人がほとんどいない。柱に取り付けられたデジタルサイネージは台湾の都市鉄道「桃園捷運」の広告を流していて、国際空港アクセス列車の始発駅であることを感じさせるが、それを見ている人は自分以外に誰もいなかった。

京成上野駅のデジタルサイネージ。台湾の鉄道の広告が表示されていた。【撮影:草町義和】

改札を通ってホームに向かうと、「スカイライナー29号」はすでに入線していた。ここも人の姿がほとんど見えない。撮影時にカメラの位置をとくに工夫しなくても、無人(に見える)ホームの写真をいともたやすく撮影できた。

天井の発車案内表示器を見てみると、「スカイライナー29号」の次に表示されている列車は「スカイライナー33号」。「29号」と「33号」のあいだを走るはずの「31号」は表示されていない。利用者の大幅な減少で減便しているためだ。

「スカイライナー29号」の次は「33号」。「31号」は運休中だ。【撮影:草町義和】

発車10分前、予約した席がある7号車に。ここもまた無人の状態だったが、発車時刻が近づくにつれてポツポツと客が入ってきて、10時20分の発車時には5人くらいになった。7号車の座席定員は56人だから、乗車率は1割ほどだ。

少ないといえば少ないが、スカイライナーに限らず京成本線の利用者の多くは京成上野駅で乗り降りせず、次の日暮里駅を利用する人が多い。いくらなんでも日暮里駅でもうちょっと増えるだろうと思っていたが、ここでも乗り込んできた客は7号車で5人ほど。乗車率は2割を超えていない。

ガラガラの「スカイライナー29号」の車内。【撮影:草町義和】

デッキ寄りの荷物置き場を見ると、キャスター付きの大きなスーツケースが2・3個ほど置かれている。7号車の客のうち半分くらいは日本語以外の言葉を話していた。いくら渡航制限が徹底しているといっても、外国との人の往来がまったく途絶えたわけではない。しかしこの人数では、スカイライナーの収入が大幅に減っているのは確かだ。

■ノンストップのはずが臨時停車

列車は京成本線を進んでいく。押上線が合流する青砥駅には10時33分に到着。スカイライナーは通常、日暮里駅から成田空港内の空港第2ビル駅までノンストップだが、4月から一部の列車が青砥駅に停車しており、押上線との相互直通運転を行っている都営浅草線~京急線方面から乗り継ぎできるようにしている。

青砥駅に臨時停車。京成線に乗り入れている京急電鉄の電車が見える。【撮影:草町義和】

いまのところ暫定的な臨時停車サービスとなっており、青砥発着のスカイライナー券は現金払いのみ対応。乗車車両も8号車のドアに限られている。窓から後方の8号車のあたりを眺めたところ、5人くらい「スカイライナー29号」に乗車していた。

1分ほど停車して「スカイライナー29号」は青砥駅を発車。次の京成高砂駅を過ぎて成田スカイアクセス線に入り、江戸川を越えたあたりから速度が上がる。ちょっと席を離れて最後部の8号車から飲料の自動販売機がある4号車まで巡ってみたが、どの車両も乗客は10人強といったところだ。

印旛日本医大駅を過ぎると、列車の速度はさらに上昇。新幹線を除く鉄道では日本最速の160km/h区間へと入っていく。スマホにインストールしたGPS速度計アプリで確認すると、最大で157km/hの速度が出ていた。

最高速度160km/hの区間へ。スマホの速度計アプリでは157km/hと表示されていた。【撮影:草町義和】

列車は成田空港エリアに入り、まず空港第2ビル駅に停車。ここで半分以上の客が降り、終点の成田空港駅には11時04分、定刻通りに到着した。その直後はホームに多少の人の塊が見えたものの、1分もしないうちにホームは無人に近い状態になった。

到着後すぐ無人に近い状態になった成田空港駅のホーム。【撮影:草町義和】

せっかく国際空港の駅に来たのでターミナルビルを少し回ってみたが、どこへ行っても人は少ない。南ウイングや北ウイングのチェックインカウンターがあるエリアも、ほぼ無人に近い状態。荷物検査のエリアこそ職員が何人かいたが、検査を受けている人はいないから、失礼ながら暇そうにしているのが見える。

ほぼ無人に近いチェックインカウンターのエリア。【撮影:草町義和】

出発案内表示器には多数の航空便の発着が表示されているものの、そのほとんどに「欠航」の2文字が付け加えられていた。ただ、展望デッキに回ってみると、多少ながら人のにぎわいがあり、飛行機が離着陸する姿も見えた。そのほとんどは貨物機だった。

■「空港依存」が裏目に

京成電鉄は大手私鉄16社のなかで、とくに厳しい状況に追い込まれている。鉄道ライター・枝久保達也さんの記事「大手私鉄『2020年度中間決算』を見る 全社赤字も大きな差、明暗分けたカギは」によると、定期外旅客(定期券以外の切符による利用者)の平均単価は、前年度2019年度の上半期が367円だったのに対し、本年度2020年度の上半期は250円で、32%の減少。これは大手私鉄16社のなかで最大の減少率だ。

国際線の出発案内。「欠航」の2文字が並んでいる。【撮影:草町義和】

ちなみに、2番目に減少率が高いのは、南海電気鉄道(南海電鉄)で16.4%、3番目は京浜急行電鉄(京急電鉄)の13.3%。4番目は名古屋鉄道(名鉄)の11.4%だ。いずれも国際空港のアクセス鉄道を運営しており、新型コロナウイルスの影響による渡航制限が各社の収入を大きく減らしているのが分かる。とくに京成電鉄の場合、運賃収入の3分の1が成田空港アクセス輸送に由来するため、厳しい状況に追い込まれたのだ。

京成電鉄は2019年10月、インバウンドによる訪日客の増加などを受け、スカイライナーを大幅に増発。運転本数は従来の1.4倍になり、一部の時間帯を除き終日20分間隔になった。ところが今年2020年のコロナ禍で状況は一変。5月から日中のスカイライナーの半分を運休している。

その一方、青砥駅の臨時停車による都営浅草線方面からの乗り継ぎ利便性向上を実施。10月からスカイライナーの車両を使った印旛日本医大→京成上野間の臨時有料特急「臨時ライナー」を平日朝の通勤時間帯に運転するなど、コロナ禍による利用者減少の穴を埋めようと必死だ。

また、京成グループの京成トラベルサービスは最近、京成線の貸切列車ツアーを矢継ぎ早に企画。成田スカイアクセス線では従来運用されていなかった電車を貸し切って同線で走らせたり、30年近く前に使用中止された東成田駅の閉鎖されたホームから列車に乗ったりするツアーなど、鉄道マニア向けといえるユニークなツアーを実施している。これもある意味、輸送人員の減少で線路や車両に余裕ができたのを逆手にとった、増収策といえるだろう。

展望デッキは比較的人が多い。【撮影:草町義和】
展望デッキから飛行機の離着陸を眺める。貨物機が多い。【撮影:草町義和】

なお、日本への入国者や帰国者は現在、入国後14日間はホテルなどでの待機(隔離)が求められているが、12月16日からは成田空港から東京都内のホテルまで入国者・帰国者を送る貸切バスの運行が始まる。スカイライナーも一部車両を入国者・帰国者の専用車両にして運転する案が浮上しており、利用者が大幅に減少したスカイライナーの「輸送余力」活用策として注目される。

しかし、このくらいの増収策で経営が大幅に改善されるとは思えない。仮に国内の新型コロナ感染が収束したとしても、国際間の移動が従来並みに緩和されるのは、さらに先になるだろう。京成電鉄は、ほかの鉄道事業者以上に厳しい綱渡りを迫られることになりそうだ。

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