JR東海「駅体制適正化」やワンマン拡大、燃料電池車調査など 2022年度重点施策



JR東海は3月25日、2022年度の重点施策と関連設備投資の概要を発表した。設備投資額は連結ベースで6830億円、単体ベースでは6600億円。このうち3750億円をリニア中央新幹線に投じる。

飯田線の水窪駅。特急を含むすべての列車が停車するが2010年に無人化された。【撮影:草町義和】

JR東海が2022年度の重点施策として挙げたのは、「安全・安定輸送の確保」「輸送サービスの充実」「超電導リニアによる中央新幹線計画の推進」「超電導リニア技術のブラッシュアップ及びコストダウン」「営業施策の強化」「グループ事業の推進」「技術開発の推進、高速鉄道システムの海外展開」「業務改革の推進」「持続可能な社会の実現に向けた取組み」。

「安全・安定輸送の確保」(1200億円)では、東海道新幹線の全線で脱線防止ガードの敷設を推進。同線の大規模改修工事はこれまでの技術開発の成果を導入することで施工方法を改善するなどして、コストダウンを行いながら進める。自然災害対策は鉄道設備の浸水対策を推進。車内のセキュリティ対策もハード・ソフトの両面から進める。

「輸送サービスの充実」(1240億円)は、東海道新幹線で「のぞみ12本ダイヤ」を活用して需要にあわせた弾力的な列車設定に取り組む。新型車両「N700S」の増備(13編成)や、N700AにN700Sの一部機能を追加する改造も行う。ホームドアは新大阪駅20番線で設置工事を進め、同駅におけるすべての新幹線ホームへのホームドア設置を完了する。

東海道新幹線を走るN700A。【撮影:草町義和】

在来線では新型特急車両「HC85系」の営業運転を開始する計画。新型の通勤電車「315系」も増備する。2022年度の車両投入数は315系が56両。HC85系は58両投入するほか、試験走行車4両を量産車仕様に改造する。

新型の通勤電車315系。【画像:JR東海】

名古屋駅では東海道本線下りホームへのホームドア設置工事を進めるとともに、QRコードを活用したホームドア開閉システムの導入に向けた準備を行う。刈谷駅ではホームの拡張やホームドアの設置などに向けた工事を推進。半田駅付近でも高架化に向け高架橋の工事を進める。

「超電導リニアによる中央新幹線計画の推進」(3750億円)では、引き続き測量・設計・用地買収を進めるほか、土木を中心とした各種工事を推進する。都市部トンネルではシールドマシンによる本格的なトンネルの掘削を開始する。

リニア中央新幹線・神奈川県駅(仮称)の工事現場(点線の範囲)。【画像:JR東海】

リニア中央新幹線の工事現場では落盤で現場作業員が死傷するなどの事故が相次いでいるが、「事故防止に関する情報及び認識を施工会社と発注者とで共有し、労働災害等の防止の徹底を図る」とした。このほか、大井川の流量減少問題で静岡県が着工を認めていない南アルプストンネル静岡工区については、「国土交通省主催の有識者会議の中間報告(2021年12月)を踏まえ、地域の理解と協力が得られるよう、真摯に対応する」とした。

「超電導リニア技術のブラッシュアップ及びコストダウン」(10億円)では、高温超電導磁石の営業線への投入に向けた検証や営業車両の仕様策定などを実施。山梨リニア実験線に導入した改良型試験車による体験乗車イベントも行い、リニア中央新幹線の開業に向けた「期待感の醸成」に取り組むという。

山梨リニア実験線の改良型試験車。【画像:JR東海】

「営業施策の強化」(90億円)では、「S Work車両」の利用促進や車内・駅のビジネス環境整備を推進。ネット予約・チケットレス乗車サービス「EXサービス」の利用拡大を目指し、2023年夏の「EX-MaaS(仮称)」のサービス開始に向けた準備を推進する。

「業務改革の推進」では、新幹線・在来線ともに「ネット予約・チケットレスサービスの利用促進等による駅体制の適正化」を挙げており、駅窓口の営業時間短縮や無人化が進められるとみられる。在来線ではワンマン運転の拡大も盛り込んだ。

「持続可能な社会の実現に向けた取組み」では二酸化炭素(CO2)排出量の削減を目指し、HC85系の投入のほか蓄電地車や燃料電池車に関する調査研究と実験準備、バイオ燃料に関する試験などを推進する。

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