京成青砥駅の脱線事故「脱線前から亀裂」運輸安全委が調査書公表



運輸安全委員会は3月24日、京成電鉄の本線・青砥駅(東京都葛飾区)で発生した脱線事故の事故調査報告書を公表した。台車に生じた亀裂は脱線する前からあり、これが原因で台車のバランスが悪くなり脱線した可能性があるとの見方を示した。

北総鉄道の7300形。写真は京成電鉄の青砥駅で脱線した第7818編成と同型の第7828編成。【撮影:草町義和】

事故は2020年6月12日に発生。京成高砂駅を10時14分(定刻の1分遅れ)に発車した羽田空港第1・第2ターミナル駅行きの列車(8両編成)が青砥駅のプラットホームに約30km/hで進入中、車掌が列車の異常な揺れに気づいて非常ブレーキを作動。停止目標位置の約44m手前で停止した。

車掌が確認したところ、7両目が右側に傾いて脱線していることが判明。さらに京成電鉄の社員が脱線状況を確認したところ、後ろの台車の右前方の側ばりに亀裂が入っていることが分かった。列車には乗客約100人と運転士・車掌の各一人が乗車していたが、負傷者はいなかったという。

脱線した編成は、京成電鉄との相互直通運転を行っている北総鉄道の7300形。1995年、京成電鉄3700形の第3748編成として製造され、2015年には北総鉄道に貸し出されて7300形の第7818編成になった。事故後の2021年に京成電鉄に返却され、再び3700形の第3748編成に戻った。

重要部検査を2014年2月26日、全般検査を2016年12月1日に受けており、月検査は2020年4月7日、列車検査を同年6月8日に受けていた。これらの検査記録によれば異常はなかった。2016年の全般検査から脱線事故の発生までの走行距離は約49万km。

運輸安全委員は台車の亀裂について、脱線前からあったと推定。この影響で台車前軸の輪重のアンバランスが大きくなり、右側車輪の輪重が減少した状態で曲線を通過したため、横圧が増加したことで右側車輪がレールに乗り上がり、脱線防護ができなくなる脱線防止ガードレールの終端である青砥駅方端部付近で、脱線したものと考えられるとしている。

亀裂の発生原因については、側ばり内部の補強板溶接箇所に応力が集中したことで局所的に高い応力が発生し、それが亀裂の起点となって疲労破壊により亀裂が進んだ可能性が考えられるとしている。車両の定期検査で亀裂の進展を発見できなかったことについては、亀裂が開口していなかった可能性があることや、側ばりの磁粉探傷検査箇所が詳細に示されていなかったことで発見できなかった可能性が考えられるとした。

脱線の原因になったとみられる台車。側ばりに亀裂が入っている。【画像:運輸安全委員会】

再発防止策については、設計情報などから内部補強板溶接の高応力発生箇所を検査対象として詳細に指定したうえで検査を実施することや、超音波探傷検査などの検査方法の併用、月検査での目視検査で側ばり下面を重点的に検査することなどを挙げた。また、台車の設計については、溶接止端部の曲率半径を大きくするような設計にすることや、曲率半径を大きくできない場合は材料の種類を考慮したうえで溶接部近辺の側ばり下面の許容応力を設定するような構造設計が必要とした。

京成電鉄と北総電鉄は運輸安全委員会の事故調査報告書の公表を受け、「本報告書に記載の内容について克明に理解を深め、鉄道事業者の使命である安全輸送の確保に向けて、必要な作業すべてにおいて万全を期すことを再度徹底いたします」とのコメントを発表した。

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