JR四国は10月18日、予讃線の松山~伊予大洲・八幡浜間(愛媛県、伊予長浜経由)で運行している観光列車「伊予灘ものがたり」について、新しい車両の詳細やイメージを発表した。来年2022年春にデビューする。
現在の車両はキハ40系気動車のキハ47形を改造したキロ47形2両編成で、全車グリーン車指定席。新車両はキハ185系特急型気動車の改造車で3両編成になる。全車グリーン車指定席は変わらない。編成定員は58人で、各車両の概要は次の通り。
●1号車「茜の章」(グリーン座席:定員27人)
海向き展望シート・2人掛け山側シート・4人掛けボックスシート
●2号車「黄金の章」(グリーン座席:定員23人)
海向き展望シート・2人掛け海向きペアシート・2人掛け山側シート
●3号車「陽華の章」(グリーン個室:定員8人)
2人掛けソファーシート4席
1号車「茜の章」と2号車「黄金の章」は、「ものがたりの一編」を表した号車愛称や室内イメージについて、現在の車両のデザインを踏襲。ガラス窓のあいだは障子の明かりに見立てたLED照明として「開放的な和空間のイメージ」を演出する。和のデザインに対比する洋風の椅子は、テーブルとともに現行車両より大きくする。
従来より1両増える分の車両となる3号車は、「陽華(はるか)の章」と名付けられる。定員8人のグリーン個室を「ラグジュアリールーム」として1室設けるほか、サービスギャレーも配置する。天井照明は「光の雫」をイメージし、壁は桜の木を用いたデザインにする。
海向きの鏡面テーブルには空が映り込むようにし、「伊予灘の海の青へと続く視覚効果を生み、車内空間が車外の景観と繫がるかのように感じていただく演出」を行う。また、レトロモダンのテイストを基調としたインテリアとしつつ、陽の光や花のデザインを散りばめ、ぬくもりや安らぎを感じられる個室空間にするという。
愛称の「陽華」は、「伊予灘ものがたり」の持つあたたかさを表す「陽」と、3号車のワンランク上の華やかさなどを示す「華」を組み合わせ、読みは「時間」「空間」の意味を持つ「はるか」としたものだ。
すべての車両にミカンをモチーフにした電球型照明を設置。各車両の障子に模した照明と1・2号車の天井間接照明、3号車のテーブル照明は、夕日をイメージしたオレンジの明かりに切り替えることが可能だ。「道後編」で夕景に合わせた照明の演出を考えているという。1・2号車の天井間接照明と3号車のテーブル照明はフルカラーにも対応しており、貸し切りイベントなどでさまざまな照明演出に対応できるようにする。
このほか、各車両に観光映像や前面展望ライブ映像を配信できるモニターを設置。トイレは3カ所に設け、このうち1カ所は多目的トイレ、残り2カ所は洋式トイレ(1カ所は女性専用)になる。車内Wi-Fiサービスを提供するほか、座席部にコンセントを設置。車内Wi-Fiでは前面展望ライブ映像などを配信する。
現在の「伊予灘ものがたり」は普通列車で、乗車には乗車券と普通列車用指定席グリーン券が必要。新車両の導入後は特急列車に格上げされ、乗車券のほか特急券・グリーン券が必要だ。これに伴い、新たな特急グリーン料金とグリーン個室料金を設定する。
今年2021年10月時点の計画では、特急料金が1200円、グリーン料金が1500円の予定。グリーン個室料金は1室2万8000円(2人以上で利用可能)で、これ以外に利用人数分の運賃・料金が必要だ。
松山~伊予大洲間の場合、運賃・料金の合計は現在1970円。新車両の導入後(個室以外のグリーン車利用)は3670円の予定で、約1.9倍になる。
「伊予灘ものがたり」は2014年7月にデビュー。現在のキロ47形2両編成による運行は12月27日限りで終了する。
《関連記事》
・予讃線「伊予灘ものがたり」現車両が引退へ キハ185系改造車にバトンタッチ
・四国の社会資本整備重点計画「新幹線を強く求める声」明記 松山の高架化も推進