九州新幹線・長崎ルート2022年秋に部分開業 フリーゲージ断念、全線めど立たないまま



JR九州と鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)は9月24日、工事中の九州新幹線・武雄温泉~長崎間(長崎ルート、西九州ルート、長崎新幹線)について、開業時期が2022年秋頃になるとの見通しを発表した。

工事中の長崎ルートの高架橋。【画像:長崎県】

JR九州と鉄道・運輸機構によると、現在の工事はトンネルや橋りょうなどの土木工事から軌道・電気・駅舎建築工事などにシフトしており、今後の工事スケジュールが見通せる状況に。これらの工事の完了後に予定されている施設の検査や走行試験、乗務員の訓練運転、国土交通省による完成検査などにかかる時間を勘案すると、2022年秋頃の完成・開業になるという。

長崎県の新幹線事業対策室によると、7月末時点の土木工事の進ちょく率は99%で、計31本のトンネルはすべて貫通もしくは完成した。電気工事の進ちょく率は約31%。架線柱の設置工事が進んでいる。

長崎県内の駅舎工事は、新大村駅で鉄骨組立がおおむね完了し、外壁や屋根などの工事に取りかかっている。諫早駅は鉄骨組立や外壁の工事が完了。屋根の工事もおおむね完了しており、内装を工事中だ。長崎駅は7月から駅舎の鉄骨組立に着手した。

武雄温泉~長崎間が開業した場合、同区間を含む福岡(博多)~長崎間の最短所要時間は、いまより30分ほど短い約1時間20分になる。

■残る区間の着工は佐賀県が猛反発

長崎ルートは、福岡市から佐賀県を経由して長崎市を結ぶ約143kmの新幹線の計画。正式な路線名は博多~鹿児島中央間を結ぶ新幹線と同じ九州新幹線(鹿児島ルート)で、鹿児島ルートと区別するため「長崎ルート」「西九州ルート」「長崎新幹線」とも呼ばれている。

長崎駅で工事中の新幹線駅舎。【画像:長崎県】

博多~新鳥栖間は鹿児島ルートと線路を共用するため、実際の建設計画区間は、新鳥栖~佐賀~武雄温泉~長崎間の約110km。このうち長崎寄りの武雄温泉~長崎間の約66kmが2012年6月までに工事実施計画の認可を受け着工した。この区間の工事費は約6200億円で、認可当時の完成予定は「認可日からおおむね10年後」(2022年頃)とされていた。

長崎寄りの区間の部分開業となることから、当面のあいだは博多~武雄温泉間の在来線特急から武雄温泉~長崎間の新幹線列車に乗り継ぐ「リレー方式」を採用。武雄温泉駅は同じホームで列車を乗り継ぐことができる構造になる。

当初は軌間可変電車(フリーゲージトレイン)を導入して新幹線と在来線の両方に乗り入れ、博多~長崎間の直通運転を行うことが考えられていた。しかし、フリーゲージトレインの開発が難航し、武雄温泉~長崎間の開業には間に合わないことから、リレー方式での暫定開業に。JR九州は2017年、採算性や安全性の面の面からフリーゲージトレインの導入を断念することを明らかにした。

このため佐賀県内の未着工区間(新鳥栖~武雄温泉)は、通常規格の新幹線(フル規格)を建設する方向に転換して調整が続けられている。しかし、もともと距離が短い福岡~佐賀は時間短縮効果も小さく、その割に建設費は約6000億円と膨大な額になることから、同区間の建設費を一部負担する佐賀県は、フル規格での整備に強く反発。環境影響評価(環境アセス)の実施も拒否しており、着工のめどは立っていない状態だ。