沖縄鉄軌道「事業化決定の段階ではない」沖縄北方担当相、当面は調査継続



西銘恒三郎沖縄及び北方対策担当大臣は3月7日、沖縄県内で構想されている「沖縄鉄軌道」について、「ただちに事業化を決定する段階にはない」との考えを明らかにし、引き続き調査が必要との認識を示した。

沖縄の鉄道のイメージ(写真は沖縄県営鉄道の跡地付近で保存されている南大東島サトウキビ運搬鉄道の機関車)。【撮影:草町義和】

同日開かれた衆議院沖縄北方特別委員会で、赤嶺政賢議員(沖縄1区、日本共産党)の質問に答えた。赤嶺議員は「沖縄県が2019年に行った調査ではB/Cが1を超える(社会的効果が事業費を上回る)という結果が出ている。制度設計に向けた具体的な検討、調査にとどまらないで次のステージに移る段階に来ていると思う」と話した。

これに対し西銘担当相は「これまでの(国の)調査では、B/Cが1を下回っている(社会的効果が事業費を下回る)ほか、開業後40年間の累積損益が黒字転換しておらず、事業の採算性が確保されていないなどの課題が明らかになっている」とし、「ただちに事業化を決定する段階にはないと考える」と述べた。

一方で西銘担当相は、沖縄本島北部が世界自然遺産に登録されたことや北部でテーマパークの開業が予定されていること、バス専用レーンの活用など既存の公共交通との関係やまちづくりとの連携を挙げ、これらの情勢変化などを踏まえて「鉄軌道等の整備のあり方について、引き続き調査を行いたい」と話した。

沖縄本島には戦前に県営の軽便鉄道や民営の路面電車・馬車鉄道が存在したが、バスの発達による利用者の減少や太平洋戦争の沖縄戦による破壊で消滅した。現在の沖縄鉄軌道は那覇市と名護市を結ぶ鉄道の構想で、国の内閣府が2010年度から調査を行っているほか、沖縄県も調査を実施している。

内閣府2020年度調査での想定ルート。【画像:国土地理院地図、加工:鉄道プレスネット】

内閣府の調査では仮定のモデルルートを設定して需要予測や事業採算性、B/Cなどの検討を行っているが、累積赤字が多額になることやB/Cが1を大幅に下回るなど多数の課題が明らかになっており、2015年度以降はコスト縮減方策の検討が中心になっている。

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