JR東日本など「エビ養殖」常磐線の無人駅で 過去に車両基地でスッポン養殖も



常磐線の浪江駅(福島県浪江町)で2月22日から、陸上養殖の実証実験が始まる。JR東日本水戸支社とJR東日本スタートアップ、養殖システムメーカーARKの3社が2月9日、発表した。

浪江駅に設置される養殖システム(左下)のイメージ。屋根には太陽光発電パネルなどが設置されている。【画像:JR東日本・JR東日本スタートアップ・ARK】

浪江駅は2011年、東日本大震災と福島第1原子力発電所事故の影響で休止。2017年3月に営業を再開したが、2020年3月に無人化された。計画ではARKが開発した小型の陸上養殖システムを同駅に設置。3月中旬からバナメイエビの稚魚を入れて養殖をスタートする予定だ。この実験では、鉄道敷地内での陸上養殖の生育状況と、飼育したバナメイエビの出荷方法やシステム稼働の安定性を実証する。

ARKの養殖システムは飼育水を繰り返し使う閉鎖循環式。3社によると、車1台分の駐車スペースがあれば設置でき、再生可能エネルギーを活用すればオフグリッド(電力の自給自足)も可能だ。駅などあまり大きなスペースがない場所でも養殖が可能になり、無人駅などを新たな産業拠点にすることができるという。

3社は浪江駅を第1弾の実証実験場所とし、福島県浜通り地区の新たな地場産業の創出を目指す。震災復興を進める福島県浜通り地区の漁港や沿線自治体とも連携し、各種イベントの開催などを検討。列車荷物輸送などを活用してバナメイエビをエキナカ店舗で販売することも今後検討する。

3社は駅での水産養殖は日本初としている。ただし駅以外の鉄道敷地内での水産養殖の事例は複数ある。JR東日本の場合、スッポンの養殖を計画して発足直後の1987年4月に運輸大臣が認可。上越新幹線の車両基地、新潟新幹線第1運転所(現在の新潟新幹線車両センター)構内に養殖用の池を5面整備し、ゴミ焼却施設の余熱で温めた温水でスッポンを育てた。しかしスッポン同士が共食いを始めて全滅。1990年度の売上は84万円で、同社は採算が取れないとして1991年度に撤退している。

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