南阿蘇鉄道のJR豊肥本線・肥後大津駅への乗り入れ構想について、熊本県は大幅な財政支援を行う方針を固めた。12月13日に開かれた県議会11月定例会本会議の一般質問で、蒲島郁夫知事が明らかにした。
蒲島知事は乗り入れ構想について「沿線自治体と熊本都市圏、さらには熊本駅や熊本空港等の交通結節点とのアクセスが向上する。沿線住民の生活利便性向上に加え観光周遊性も高まり、その効果は県内全域に及ぶ」と評価。「県として強力に後押しするため、乗り入れ費用に対する地元負担を大幅に軽減する方向で財政支援を行いたいと思う」と話した。
具体的な内容は来年度2022年度当初予算の編成過程で検討を進めるとしており、同予算案で整備費の補助金が計上されるとみられる。
南阿蘇鉄道は、立野~高森間17.7kmの高森線を運営する第三セクター。同線は1928年に国鉄線として開業し、1986年に南阿蘇鉄道が経営を引き継いだ。2016年4月の熊本地震で橋りょうが変形するなど甚大な被害が発生。7月には中松~高森間7.2kmの運転を再開したが、現在も立野~中松間10.5kmが運休中だ。
もともと利用者が少ないローカル線で経営は厳しく、南阿蘇鉄道単独では復旧が困難なことから、上下分離方式で復旧することに。現在は2023年夏の再開を目指し工事が進められている。これに伴い、アクセス向上策として豊肥本線の立野駅から肥後大津駅に乗り入れる構想が浮上。昨年2020年10月、沿線の南阿蘇村と高森町の2町村などで構成される南阿蘇鉄道再生協議会が乗り入れ構想を了承した。
南阿蘇鉄道は今年2021年10月、JR九州の協力を得て乗り入れのための設計に着手。整備費は約4億2000万円とされている。当初は2町村が折半して拠出することが考えられていた。しかし、南阿蘇鉄道が新型コロナウイルスの影響を受け2020年度決算で経常赤字を計上。この赤字分を2町村が穴埋めしていることから、2町村は2021年11月25日、乗り入れ費用について熊本県に財政支援を要請していた。
肥後大津駅は熊本都市圏と阿蘇方面の境界点といえる駅。熊本寄りは電化されており、朝ラッシュ時には1時間に5本の通勤電車が走っているほか、同駅と熊本空港を結ぶシャトルバスも運行されている。一方、肥後大津駅から立野駅は非電化区間で、列車も熊本寄りの電車と阿蘇寄りの気動車で分割されている。南阿蘇鉄道の各駅から熊本駅に向かう場合、地震前の普通列車では立野駅と肥後大津駅で2回乗り換える必要があった。
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