東武鉄道の春日部駅「高架化」工事のいま 駅構内からは見えない準備の気配

春日部駅の構内を走る東武野田線の電車。【撮影:草町義和】

伊勢崎線(東武スカイツリーライン)と野田線(東武アーバンパークライン)が交差し、東武鉄道の要衝といえる春日部駅(埼玉県春日部市)を9月19日に訪ねた。だだっ広い構内に多数のホームと線路があり、ホームの屋根や柱など、どの施設も古びていてレトロな雰囲気が漂う。野田線のホームには立ち食いラーメン店があり、やや混雑していた。

この駅と前後の線路を高架化する連続立体交差事業(連立事業)が動き出した。2019年12月、都市計画法に基づき事業認可され、今年2021年3月には着工記念式典が行われた。いまのところ、駅構内を見る限りでは工事の気配は感じられない。しかし、高架化に向けた準備は少しずつだが進んでいる。

更地化した「仮設用地」出現

春日部駅の東口(実際は北側)に出てみると、左側(西側)には空き地になった場所がある。つい最近までコンビニエンスストアなどが入る2階建ての商業施設があったが、工事のため撤去されたのだ。柵の張り紙には「このポスターの付近に仮設のホームと線路を造る予定です」と記されていた。

駅の東口(北側)にあった商業施設が撤去されて更地に。ここに仮設のホームと線路(伊勢崎線の上り線)が建設される。【撮影:草町義和】

続いて右側(東側)の線路に沿って進む道路を歩いて行くと、やはり最近建物を撤去したばかりのような空き地があり、連立事業の事業認可を祝う看板が立てられていた。これも仮設の線路を設けるために買収した土地のようだ。

駅の東側へ少し歩くと事業認可の取得を祝う看板が空き地に立てられていた。【撮影:草町義和】

この道路の途中には、伊勢崎線・野田線の線路をくぐって駅の南北を結ぶ地下道があった。エレベーターなどはなくバリアフリー非対応。通路内には「春日部駅構内通行費用支援事業」を案内する張り紙があった。高齢者や身体障害者などを対象に、春日部駅の普通入場券や定期入場券の購入費を補助するという。

南北を結ぶ地下道(右)はバリアフリー非対応で駅から離れている。【撮影:草町義和】
地下道内には春日部駅の入場券購入費用を補助する制度の案内が張られていた。【撮影:草町義和】

現在の春日部駅は駅舎が東口と西口(実際は南側)に分かれていて、東西両口の駅舎は60mほど離れている。改札内はエレベーター付きの跨線橋(こせんきょう)で結ばれているが、改札外には自由通路がなく、駅から数百m離れた踏切やバリアフリー非対応の地下道に迂回(うかい)しなければならない。

高架化されればこうした状況も解消されるが、それには相当な時間がかかる。そこで春日部市は春日部駅構内の跨線橋を使って通り抜けられるよう、入場料金の補助制度を設けている。

踏切解消は西側だけに

春日部駅周辺連立事業の実施位置。【画像:国土地理院地形図、加工:鉄道プレスネット編集部】

春日部駅付近連立事業の事業区間は、伊勢崎線が春日部駅とその前後の線路を含む約1.6km。野田線は同駅とその前後の線路を含む約1.9kmだ。このうち高架化されるのは伊勢崎線が約1.4km、野田線が約1.5kmになる。

高架化が完了すれば、伊勢崎線の北春日部寄り5カ所の踏切がなくなるほか、野田線も八木崎寄り5カ所の踏切が解消される。ただし線路が地上から高架に移る部分にある踏切(伊勢崎線・野田線の各1カ所)は廃止される。総事業費は2021年7月30日時点で約650億円。

当初の構想では、春日部駅東側の道路陸橋(内谷陸橋)のさらに東側にある3カ所の踏切も解消するはずだった。しかし事業費の縮減を図るため高架化区間を短縮し、駅西側の踏切のみ解消されることになった。

この連立事業で最大規模の工事となるのが春日部駅構内だ。現在の同駅構内は単式ホームと島式ホームを組み合わせた3面7線(うち2線はホームなし)。これを島式ホーム4面8線(伊勢崎線と野田線それぞれ2面4線)の高架ホームに造り替える。

工事の手順は複雑だ。まず東口側に伊勢崎線(上り線)の仮線と仮ホームを整備し、そこに伊勢崎線(上り線)を移設。その後は伊勢崎線(下り線)と野田線(上下線)を東口寄りにスライドさせるように順次移設する。これにより空いた野田線のスペースを使う形で同線の高架ホームを整備して高架化。続いて伊勢崎線(上り線)と伊勢崎線(下り線)を順次高架化することになる。

まずは仮線を整備して線路を東口側にずらす。現在は(2)-1の伊勢崎線(上り線)の仮線を整備するための用地買収が行われている。【画像:埼玉県】
線路をずらしたことで生まれた空間を使って高架橋を建設する。【画像:埼玉県】

現在行われているのが、東口側に伊勢崎線(上り線)の仮線・仮ホームを整備するための用地買収と建物の撤去。つまり高架化に向けた準備の最初期の段階ということになる。

地上に多数の線路とホームが設置された春日部駅。この景色も今後大きく変化する。【撮影:草町義和】

都市計画上の事業施行期間は今年2021年7月時点では2031年度までとされており、少なくとも10年はかかる。まだずいぶん先のことのように思えるが、仮線・仮ホームの工事が進めばレトロな空気が流れる春日部駅の景色も少しずつ、そして大きく変わっていくだろう。

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