西鉄天神大牟田線を高架化する連続立体交差事業(連立事業)の工事が節目を迎えつつある。想定外のトラブルで工事が遅れたものの、高架線への切替まで1年を切った。
この連立事業は、西鉄天神大牟田線の井尻~都府楼前間7.7kmのうち、福岡市博多区の南八幡町から春日市を経て大野城市下大利三丁目まで約5.2kmの線路を高架化するもの。事業主体は福岡市内の約1.9kmが福岡市、大野城・春日両市内の約3.3kmが福岡県だ。
この事業により福岡市内の雑餉隈駅、春日市内の春日原駅、大野城市内の白木原駅と下大利駅が高架駅に。福岡市内7カ所と大野城・春日両市内12カ所の合計19カ所の踏切が解消される。
福岡市の事業区間は、高架線路の敷設がほぼ完了。雑餉隈駅の高架ホームでは案内標が設置されるなど、すでに仕上げの段階に入っている。本年度2021年度は前年度に引き続き電気工事が進められ、高架切替前に行う工事がおおむね完了する見込み。
福岡市内の区間で大がかりな工事になったのが、雑餉隈駅西側の天神大牟田線と筑紫通りの交差部だ。ここは筑紫通りが陸橋(麦野こ線橋)で地上の線路をまたいでいて高架橋の工事に支障することから、陸橋を撤去する必要があった。
このため、陸橋の脇の地上に仮設道路を整備して陸橋を閉鎖し、陸橋のすぐ上に高架橋を建設した。仮設道路は2019年2月から使用開始したが、これにより仮設の踏切を設けることに。踏切の遮断時間は平日朝ラッシュ時の1時間あたり38分で、高架化までの期間限定とはいえ道路の混雑が激しくなった。ただ、西鉄が踏切制御を改良したことで遮断時間は4分短い34分に改善されている。
陸橋は当初、高架化完了後に撤去し、高架化から1年後の2023年8月に筑紫通りの供用を開始する計画だったが、福岡市は工程を前倒しして今年2021年11月に陸橋を撤去することにした。これにより筑紫通りの供用開始も約1年前倒しされ、高架切替翌月の2022年9月になる予定だ。
ちなみに、高架化にあわせて雑餉隈駅から春日原寄り約600mの地点に新駅が設けられる。駅には商業施設も併設される計画。周辺は住宅地でマンションの建設も進んでおり、利用者の増加が見込まれる。本年度2021年度から新駅の駅舎工事が本格的に始まるという。
福岡県の事業区間でも、春日原駅を除いて線路の敷設がほぼ完了。春日原駅では型枠の設置や梁(はり)の架設が進んでいる。白木原駅では高架ホームの照明器具の設置が進むなど、仕上げの段階に入った。
この連立事業は当初、今年2021年3月末には高架切替を実施して踏切を解消し、来年2022年末までに現在の線路の撤去などの工事も完了する計画だった。しかし2019年10月、春日原駅の旧駅舎の地中から想定外のコンクリートなどが見つかり、撤去作業で工期が延長された。春日原駅は福岡県の事業区間内だが、福岡市の事業区間もこれにあわせて工期が延長されている。
現在は福岡市・福岡県の事業区間とも来年2022年8月に高架切替・踏切解消を行う予定。雑餉隈~春日原間の新駅は2023年度の後半にも開業する予定だ。
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