阿佐海岸鉄道「DMV鉄道区間」上限運賃が認可 1.2~2倍以上の値上げに



阿佐東線に導入されるDMV。【画像:徳島県】

国土交通省の四国運輸局は8月2日、阿佐海岸鉄道が申請していた阿佐東線(徳島県・高知県)の旅客運賃の上限設定・変更を認可したと発表した。認可は7月26日付け。

認可されたのは、阿佐東線の阿波海南信号場から甲浦信号場の10.0km。このうち阿波海南信号場~海部間1.4kmはJR四国から経営を引き継ぐ区間(旧・牟岐線)のため上限運賃を新たに設定し、海部~甲浦信号場間8.6kmは現在の上限運賃を変更する。認可された運賃の実施予定日は「DMV開業日」とされており、具体的な日付は設定されていない。

普通旅客運賃の上限は、1.4kmが200円、7.5kmが500円、10.0kmが700円。現行運賃(JR四国から経営を引き継ぐ区間の旅客運賃を加えた参考運賃)と比較した場合、7.5kmまでは1.2倍弱の値上げで、10.0kmでは約1.56倍の値上げになる。

定期旅客運賃の上限は通勤1カ月の場合、1.4kmが7800円、7.5kmが1万9500円、10.0kmが2万7300円で、約1.48~1.71倍の値上げ。通学1カ月では、1.4kmで6600円、7.5kmで1万6500円、10.0kmで2万3100円。7.5kmは約1.69倍、1.4kmと10.0kmでは2倍以上の値上げだ。

増収率は全体で23.006%。定期外運賃は22.749%、定期運賃は39.184%になる。

阿佐海岸鉄道は従来、海部~甲浦間8.5kmの阿佐東線を運営。鉄道と道路の両方を走れる乗り物「デュアル・モード・ビークル」(DMV)を導入する計画が浮上し、現在はDMV導入に向けた準備のため代行バスが運行されている。今年2021年内にはDMVの運行が始まり、JR四国からの移管区間を含む阿波海南~海部~甲浦間は鉄道線路、その前後は道路を走る。今回認可されたのは、鉄道線路を走る区間の上限運賃だ。

当初は海部~甲浦間のみ線路を走ることも検討されたが、海部駅は高架構造のうえ同駅周辺に民家が密集していることから、線路と道路をつなぐアプローチ部の工事費が割高で工事が難しいという課題があった。このため、海部駅の一つ手前にある牟岐線の阿波海南駅にアプローチ部を整備することに。同駅は地上構造のため海部駅より工事費を抑えることができる。これによりJR牟岐線の阿波海南~海部間を阿佐海岸鉄道の阿佐東線に編入することになり、阿佐海岸鉄道は同区間の第1種鉄道事業許可を2020年10月23日に受けた。

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